生徒会長に当選して大忙し、かと思いきや、兼古先輩は休み時間に僕たちの教室のドアのところに立っていた。
「上柳さん、ちょっといいかな?」
上級生が来ることなど前代未聞、しかも今をときめく生徒会長が来たとなると、上柳さんも行かないわけにはいかなかったよう。そこで残された僕たちは、沙紀ちゃんに話を聞くことにした。
「兼古先輩が口を出すと、余計にややこしくなったりしないのかな?」
「そこは、兼古先輩が何とかしてくれると信じよう」
確かに僕も、辞めたと聞いたときには驚いたけど、彼女とどう接したらよいのか分からない。このところ、明らかに僕を避けている感じがするし。
「やっぱり、僕にも関係しているの?」
沙紀ちゃんは、それを聞くと苦笑いをした。
「沢渡くんと顔を合わせるのが辛いのよ。でもそれだけじゃない。園田先輩にもいろいろと問題があるみたいで・・・」
だったら、僕が話を聞いてみても火に油を注ぐようなものか。
「僕に出来ることは何かないかな?」
「ねえ、沢渡くんは、本当にまゆのことを好きじゃないの?」
うん・・・、残念ながら。
「こんなことになっても?」
・・・同情はするけど、それは好きだからじゃない。責任を感じるからで。
「それで、沢渡くんには、本当に彼女がいるの?」
「うん・・・。僕にはその人のことだけでいっぱいいっぱいなんだ。余所見をしていると、また怒られる」
「うわ~、沢渡くんも意外と普通の人だった。ちょっと親近感」
それってどういう意味?
「それはともかく、私としても困っていて、どうしたらいいのか分からないのよ。・・・役のように、友情よりも愛情を選んじゃったっていう感じでね」
そして次のチャイムが鳴る頃に上柳さんは帰ってきたけれど、表情は暗いままだった。