今日は沢渡と話をすることにした。何やらこの秋は忙しいとのことだが、それは聞かないことにして・・・。
そんな彼が心配しているのは、やはり上柳さんのことのようだった。
“僕がいけないんでしょうか・・・”
まずは自分のせいかと考えてみるところは彼らしい。
「お前は別に悪くない。確かに、上柳さんがヤケを起こしたあまりに役に入り込みすぎて、それに腹を立てた沙紀ちゃんがまたヤケを起こしたという流れはあるかもしれない。でもイチイチこだわっていられないのが人生じゃないか?・・・お前だって傷ついたりすることもあるだろう?そんな時どうする?」
“まあよくないことが続く時だってありますよね。だからさほど気にはしないかもしれません”
「そうだろ?」
“でも自分の責任で誰かが傷つくところは見たくないんです。特にそれが女の子である場合には、もっと何か出来ることがあったんじゃないかって考えてしまうんですよ”
「だったらお前は、これまでフッてきた子のことをイチイチ気にしているのか?」
“一応、告白されないように、呼び出しを受けた段階で断ったり、先に逃げたりしていますよ。そしてもちろん、その子のためにも何もなかったようなフリはします。でも気まずいです、実際のところ”
優しいな、いつも。
「でもだからと言って、みんなから距離を置くのも寂しい気がするんだよ。お前にはそれが自己防衛の手段かもしれないけれど、何かあったときには俺っていう味方がいることも忘れないでいてほしい」
“ありがとうございます。先輩には本当に感謝しています。先輩がいなかったら、僕の学生生活はどうなっていたことか。そう考えるだけで怖くなります”
・・・それは少々大袈裟なんじゃないか?
「だから、上柳さんのことは自然に任せて。自分から近づかなくていい、彼女の方から何か言ってきたら、その時にまた対応策を考えればいいわけだから。幸い、園田にも何かしでかすような気配は見られないから安心していいよ」
“分かりました。ありがとうございます”
・・・いい男は辛いな。贅沢な悩みだ。でも責任感が強すぎるのが心配でならないんだけど。