3/1 (火) 17:00 探り合い

でも、校長先生と教頭先生は口が堅いようで、今日になっても職員室の空気はさほど変わらなかった。・・・とっても助かる。また世間でも特に話題が広まっているという感じはない。

“舞のご両親にも、きちんと挨拶に伺わないとね”

昨夜、貴くんは実に楽しそうに電話をかけてきた。

“でも・・・いつも忙しくて、なかなか難しいんだよね”

「いいわよ、別に無理しなくても。選挙が終わって、議会が落ち着いてからでいいから」

“その頃にはもう4月で、お妃教育が始まっているよ。・・・そのスケジュールに関してはちゃんと担当者が計画を立ててくれているから、安心して。僕がいくら忙しくても、それとこれとは関係がないから”

「貴くんはサポートしてくれないの?」

“そういう意味じゃないよ。宮殿に住んでもらうことになるから、これまでより気軽に会うことができる・・・の前に、舞は無事に仕事を勤め上げることだけを考えておくことだよ。一度にあれもこれもしなくていいから”

そうね。私が持っている6年生は、受験真っ只中。すでに決まっていたり、普通に公立の中学校に進む子たちが大半だけど、まだ進学先が決まっていない子もいる。それに、年度末ということでいろいろと書類を書かなければならないし、仕事の引き継ぎもあるしで、大忙しになっている。

「杉浦先生は、お辞めになってからどうなさるの?」

・・・本当に、みなさん昨日貴くんのことを見かなかったのかな?と思うけど、特に詮索するような感じではないから、素直に答えておくことにする。

「結婚できればいいと思っていますが、まだ本決まりではありません」

「決まっていないのにお辞めになるの?」

正確には、貴くんと結婚することは間違いないのだけど、私のお妃教育での出来によって、公になるかならないかの違いが出てくるらしい。そんなことがあってはならないけど。

「今年はちょうどキリがいいですから」

「それはそうですわね。・・・相手が殿下というのは本当なんですか?」

・・・ウソ。私の推測は間違っていたみたい。

「はい。ただし、まだ内密にお願いします」

「頑張ってみますけどね・・・」

そして不敵な笑みをたたえて去っていかれた。・・・こういうのは一番嫌なパターン。聞きたいなら、最初からそう聞けばいいのに。つまり、職員室の先生方は知らないフリをしているだけで、本当は話したくてうずうずしていらっしゃるのだろう。

貴くん、こういうのよくないよ。

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