同僚の中には、年が近く親しい先生もいる。
「本当に殿下と結婚するの?」
・・・ほら、やっぱり知ってる。だから、どこでそれを聞いたのか確かめることにした。
「他の先生方が噂されていたのよ。学校に見えたというのも本当なの?」
彼女はその時間帯は職員室にいなかったとのこと。ちなみに貴くんに、学校に来たとき誰かに会ったの?と聞いてみたら、竹内さんに手引きしてもらったから誰にも会っていないとのことだった。するとやっぱり、校長先生か教頭先生が漏らしていることになる。
「ううん、全部がそうじゃないの。もともとの情報源はネットみたいよ。私も随分前から目にしていたから」
別に隠していたわけではないから、しょうがないけどね。
「やっぱり、相手が殿下となると話が難しくなるわよね。私としては彼が高校生のときからの付き合いだから、特に意識はしていないんだけど」
「あの殿下がお相手だなんて羨ましい限りよ。だってまず第一に優しそうでしょ、第二に楽しそうでしょ、第三にいろんな国に行けそうでしょ」
いろんな国にって・・・、観光に行くわけじゃないんだから。
「ねえ、殿下ってどんな人?」
どんな人って言われても・・・、普通の人にはどう見えてるの?
「社交的だし、語学は堪能だし、歌も歌えるんでしょ?でも仕事ばっかりしていそうで、正直あんまり女性の影は見えないのよね」
うっ、・・・そんなことはないと思うよ。だって私がテレビで見ているだけでも、いつも外賓と、特に女性がお見えになると一緒に映っているし。
「恋人だからそう見えるだけなのよ。確かに一緒には映っているけど、下心がありそうには見えないのよね。殿下がそんなことするわけないっていうか」
どういうこと?
「殿下はいつも私たち国民のことを考えてくださっているから、私たちの王子さまなのよ。特定の誰かのために尽くすタイプには見えないというか、信じたくないというか・・、複雑な心境よ。まさか、こんなに近くにいる人のことだけを愛しているなんてね。冗談だって言ってよ」
あの・・・、それは貴くんのことを美化しすぎているだけだと思う。
「じゃあ、彼がウチの学校の先生方に挨拶したがってるって言っても、会いたくない?」
「ううん、ぜひ紹介して」
ゲンキンな・・・。