舞の家には何度か行ったことがあるので、お母さまとは顔を合わせたことがあるが、お父さまときちんと話をするのは初めてだ。
僕たちは付き合いが長いので、結婚することになったのはごく自然の流れだとご両親はとらえていらした。ただやはり、今後の生活のことが気になるご様子で、いろいろと聞いていらした。
「王宮の結婚式とは、どのようなものなのでしょうか?」
「私たちは、今後も娘に会えますでしょうか?」
「娘も公務に出ることになるのでしょうか?」
「マスコミが、私共の家にも来るのでしょうか?」
僕たちの結婚は表向きは少し変わっているかもしれないけれど、根本的なところは普通と何も変わらない。二人が一緒にいられる、これが結婚だ。だから、また日を改めてゆっくり話をさせていただこうとは思うけれど、ご両親に安心していただけるように、今お答えできることは出来るだけ丁寧にお話させていただいた。・・・その態度からも、舞のことをとても心配していることが伝わってきたのが嬉しかった。
「申し訳ありません。折角の料理が冷めてしまいまして」
話が落ち着くと、お父さまが苦笑しながらおっしゃった。・・・確かに、僕たちは料理そっちのけで話をしていた。そうなるとかわいそうなのが、舞。僕たちが手を止めて話しているのに自分たちだけ食事をするわけには行かなかったようで、ずっと固まっていた。
「ご両親が心配なさるのもごもっともです。ですが、彼女のことは私が責任を持ってお守りしますので、ご安心ください」
「殿下がおっしゃると、実に頼もしいものですね。ふつつかな娘ですが、どうぞよろしくお願いいたします」
「彼女がいてくれると心強いので、安心して仕事に励むことができます。ですからその分も、彼女を幸せにしてあげたいと強く思っている次第です」
「若いということは羨ましい・・・」
お父さまが微笑んでいらっしゃる。この様子で行けば、きっとすべてがうまく行くだろう。
「ねえ、もう堅苦しい話はやめにしようよ。緊張しちゃうから」
「舞、言葉を慎みなさい」
「お父さん、どうせすぐにバレてしまうと思うから言うけど、貴くんはいつも冗談ばかり言って、何を考えているんだかよく分からない人なのよ。仕事をしているときはしゃきっとしているけれど、普段は全然気取らない人だから、遠慮しなくていいわよ」
「え?僕はそんな風に思われているのか?・・・心外だな」
「もう、バカなことを言ってないで。お願いだから、この変な空気を断ち切ってよ。本当に気持ち悪いから」
「舞、大人しくしていなさい」
「ねえ、貴くん・・・」
訴えかけるような目がとてもかわいくて、もっとからかってみたくなる・・・。