5/1 (日) 15:00 私に出来ること

「ダメ、村野さんにそんな危ないことをさせられないよ」

「でも私も、これ以上黙って見ていることに耐えられないし。…それに私は、別に沢渡くんに恋愛感情は持ってないし」

「村野さん…」

すると沢渡くんはほっとしたように一つためいきをついた。…沢渡くんって、恋愛感情を持った相手には妙に意識してしまうところがあるみたい。そういうところはかわいい感じがする。

「でも、あまり相手をあおらないようにしてほしい。それから、何かの時にはすぐに連絡してほしい。できれば、未然に防ぐのが一番だからね。それでも不測の事態が起こるといけないから…」

沢渡くんが携帯電話でコソコソと何かを話すと、間もなく男性が現れた。20代後半くらいかな?優しそうだけど強そうな人…。

「これを制服の胸ポケットに入れておいてくれる?何かの時には反応するようになっているから」

何これ?薄い板のようなもの?…それにいつの間にか、さっきの男性はいなくなっているし。

ということで沢渡くんとの協定が成立し、手元には黒くて薄い板状のセンサーか何かが残った。何だろう?これは。と思って見てはいるのだけど、表面には何も書かれていないし、沢渡くんも詳しい説明はしてくれなかった…あの男性に関しても。…沢渡くんってナニモノ?

明日から3年生が復帰してくる。新作の脚本については部長からある程度聞いていて、沢渡くんは大変な役をこなさなければいけなくなる。部長は全国大会での優勝を強く望んでいる。教えてもらった範囲でしか分からないけれど、今度の作品はとてもいいものになりそうだ。兼古先輩のお医者さんぶりもとても素敵だろうし、きっと涙の感動作に仕上がること間違いなし。

そう思うと私は、つくづく演劇のことしか考えられないみたい。だったら、3年生が引退した後のことも少しずつ考えていかなければならない。部長は凄い人だから、今のうちに少しでも多くのことを学んでおかないと。そして脚本も書いてみなくては。

私たちの世代なら当然沢渡くんが主役なわけで…、やっぱりカッコイイところを見せてあげたいけど、ここでしか見られない姿も見せてあげたい。だったら悪人の役とか?でも芸術家肌のような気もするし、…それゆえに神経衰弱に陥りそうな感じがするし、でも無難なところで先生とか、大きく見せるなら王様の役とか。でもいずれにせよ、相手役も彼に見合うほどでないといけないわけで、となると朝霧くんか、…川端さんか。…彼女のことがかなり気になるのよね。

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