6/14 (火) 23:00 You can do it!

「な~にイラついているんだ、このバカ」

いきなりその言葉は何!?と思いつつも否定はできず、僕は素直に結城をソファーに迎えた。結城は殿下の婚約発表のおかげでとても忙しいはずなのに、わざわざ来てくれたのだ。

「加藤に泣きつかれたらしょうがないだろ?・・・もっとも、その加藤は兼古くんから相談されたらしいけどな」

あ・・・、また僕はみんなに迷惑をかけている。

「でも俺も悪かったと思っているんだ、折角帰ってきてくれたのに、なかなか相手をしてやる時間がなくて」

そして僕は結城に抱き寄せられるまま、Tシャツ越しの逞しい胸板に身を預けた。シャワーを浴びたばかりのようで、いい香りがする。・・・そしていつの間にか僕は自然と目を閉じている。

そう、僕だって僕なりに、どうしてこんなにイライラするのか考えてはいる。

「多分、刺激が強すぎたんだよ。折角見えないことに慣れたのに、また見えるようになって… しばらくあまり人と会っていなかったのに学校でいきなりたくさんの人に会ったことで、いろんな情報をうまく処理できないでいるんだと思う」

「加えて、響のことで辺りは騒がしいからな。オーバーヒートしたか」

どうやらそうみたい・・・。見たくないものまで見えてくるから、見えなかった頃が懐かしいくらいだ。

「でも前はきちんと処理できていたんだから、今はできないってことないよな」

ギクッ。・・・結城は、穏やかな口調ながらも核心を突いてきた。同時に、僕が逃れようとしても、逆に腕の力を込めて逃がさない体勢を作っている。

「この間までのお前は、周りをがっちりガードして殻に閉じこもっていたじゃないか、それは自己防衛には必要な手段だったかもしれない。でも今は違う。俺は前より強くなったんじゃないかと期待していたんだけどな、やっぱり慣れる時間が必要だったか」

「分かっているんだけど、心を開こうとすればするほどイライラして、周囲の人に当たってしまっているんだよね」

分かるよ、それは、と今度は僕の両肩に手を置き、体を離して僕の目を見据えた。

「イライラしたら、まず目を閉じて深呼吸だ。それでもダメなら加藤と話せ、それでもダメなら海に行って来い、それでもダメなら俺のところへ来い。でもまずは、前はどうやって対処していたのかを思い出そうとするんだぞ。それか、もしお前自身が変わってしまったことが原因で対処し切れていないのなら、新たな対処法を見つけるんだ。・・・お前ならできる、そうだよな?」

結城は僕の頬に軽くキスをして、優しく抱きしめてくれた。・・・自然と涙が溢れ出す。そしてそれはとどまるところを知らなかった。でも結城はずっと優しく髪をなでてくれていた・・・昔と同じように。

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