今日は仕事で地方に来ているのだけど、電車を降りるなり人だかりができてしまった。
「殿下、ご結婚おめでとうございます」「握手してください」「よろしければ、この土地の名産なのですが・・・」
次々と声がかかり、にこやかに応対していくが、物品だけは基本的に受け取らないことにしている。たまってしまって仕方がないからだ。
「お気持ちだけいただいておきます。ありがとうございました」
王宮に対するご意見なら、謹んでお受けするのですが・・・。
そして一般の方々にとどまらず、行く先々のスタッフの方々も、緊張、あるいは興奮されているので、おかしいやら、やりにくいやら。でも中には大胆な人もいる。
夕食、は訪れている地域の女性首長ととることになったのだけど、
「国政に参加する女性はまだまだ少ないのが現状です。何か対策はお考えですか?」
と、いきなり食ってかかるような言い方をされたので、急いで頭の中を通常モードに切り替えた。
「私は特に議員を男性と女性とに分けて見ているわけではありませんし、年齢についてもさほど意識はしていません。熱心で、国民の気持ちを考えることができて、実行力のある人であれば、どんな人でも歓迎します」
「ですが、女性にはいろいろと制約があるではありませんか。私も、今は二人の子どもが手を離れたのでこの仕事をしていられますが、少し前まではこうはいきませんでした。そこは男性の協力が必要だと思いますが?」
う~ん。
「それも、男性とか女性とかには関係なく、家の内外での仕事は夫婦で協力し合うものだと思うのです。別に女性が外で働き男性が家事をしてもおかしくありませんし、仕事をコントロールして出産や育児のための休暇を取ることもやぶさかではないと思います。ですが、私のような考えの持ち主はまだ少数派だと思いますので、若者の教育やそれを受け入れられるような社会の基盤作りに努めたいと考えております」
僕としては、女性だからどうこう、なんて言ってくることのほうが性差別に繋がっている気がするけど。
「そうですよね。王宮には殿下や沢渡長官のような方がいらして、女性には大いにアピールなさっているわけですから、議員に女性が少ないというのは、私たちが口ばかりで行動に移せていないだけなのでしょうね」
「いえ、そこまでは申し上げていません、中には何らかの事情で行動に移せない方もいらっしゃるでしょう。その場合は自分の意志を他人に託せばいいのです。ですから私も、今お伺いしたことは今後の参考にさせていただきます」
僕は政治の中枢にいる人間だから、いろんなことができる。・・・そして実際に人前に立つときには少しでも外見がいいほうが説得力が出ると思うので、身の回りのことにはいつも気をつけている。だけどそれは女性だけを意識しているわけではない。