9/29 (木) 2:30 願い

ベッドに入ったのに眠れなくて、ベッドサイドのライトをつけた。さっきまでは眠れそうな雰囲気だったのに急に目が冴えてしまい、やむを得ず睡眠導入剤を流し込む。

水を取りに行ったついでに、鷲塚くんから送られてきた演劇部の写真集を持ってきた。彼は沢渡くんにとても興味を示していて、最近では撮影会にとどまらず、普段の沢渡くんも撮りたいと言ってきている。その第一弾が学校祭での追っかけ撮影で、舞台上の写真はもちろん、メイクの過程など舞台裏の写真、そしてクラスでの写真も撮って本にしてくれた。今のところ非売品である。

ベッドのヘッドボードにもたれそのページをめくると、改めて沢渡くんのカッコよさに気づかされる。特に悪魔を演じているときの眼力は半端なものではなく、普段とのギャップに驚いてしまった。

もちろん、政治家としては穏やかなほうがいい。沢渡くんがデビューしてから、若年層の政治への関心が高まったとの報告がある。よって沢渡くんがガイドとなって、政治が身近なものであることをアピールしてもらいたい。でも実際の議会はかなりドロドロした世界だ。僕自身も、巷では怒らせると怖いなどと言われているようだけど、沢渡くんにこの悪魔のような目をさせたら・・・他の政治家には大いに効果がありそうだ。やっぱり沢渡くんには、王宮の顔としてこれからどんどん表に出てもらいたい。

そして鷲塚くんに、いい写真を撮ってくれてありがとう、とメールを書くと、まだ起きていたらしくすぐに返事が返ってきた。

“そんなことないよ、殿下は今でも王宮の顔だよ。ただ俺としたことが、君とは何故か、カメラマンと被写体として向き合うよりも、話し相手として直接向き合っているほうが楽しいんだ。どうしてかな?”

こちらこそ、どうしてかな?・・・僕自身も、写真を撮られることがそう好きなわけではない。身だしなみや立ち居振る舞いに気をつけて、いつも見られていることは意識しているけれど、自分の写真はあまり見ない。

祐一は沢渡くんのことを、「嫉妬するほど美しい」と形容していた。確かにいい男だと僕も思う、でも別に嫉妬はしない。これは沢渡くんへの能力に対してもだ。僕は彼が注目を集めることについては喜ばしいと思っている。彼のような後輩がいると頼もしい・・・彼が王宮の仕事の一部を引き受けてくれることになったので、僕は自分の仕事に集中して打ち込むことができる。

これからはもっと、次の世代に伝えることについて考えなければならない。少なくとも、沢渡くんには教えられることは全部教えたい。彼が彼の世代をリードして、この世の中を平和でより豊かなものにしてくれることを僕は望む。

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