今週から林田さんが学校に来ている。ただ僕は昨日学校に来られなかったので、どんな様子だったか聞いてみたら、クラスでは浮いた存在になってしまったとのこと。これまでは学年一の美人だと評判で、取り巻きたちもたくさんいたのに、あの出来事で状況は一変してしまった。でも、こうなることは分かっていたのに学校に来た林田さんはある意味偉いし、逆に林田さんからの命令だったとは言え、協力した取り巻きたちが、停学にならずにのうのうとこれまで通りの生活をしているのは許せない気がする。
深雪には事前に聞いておいた。僕としては林田さんを謝らせたいと思うけど、どうしたいか?と。
「私は、このまま何もなかったことにしたい。どうせすぐみんな忘れちゃうだろうし・・・」
「でもこれからも顔を合わせることがあるだろう。そのときに気まずくないか?」
「・・・気持ちは分かるもん。私が同じ立場だったら・・・実行するところまでは行かないけど、嫌だなとは思う」
そんなこと考えるなよ、と、そのときは深雪のことを優しく抱きしめてあげたのだけど、僕としては彼女と話をしないわけにはいかなかった。放課後に、空き教室に呼び出す。
「本当にごめんなさい。お詫びのしようもないわよね」
僕の顔を見るなり泣き出してしまった彼女には、プライドが欠落してしまっていた。それは少々哀れだとは思うけど、
「僕に対してじゃなくて、彼女に対して反省の念を持ってほしい。そして恨むなら僕を恨めばいい。彼女しか愛せない僕がいけないんだ、彼女は関係ない」
と、言いたいことははっきりと言っておいた。今回の事件は、その気になれば殺人未遂で警察に突き出すこともできたけど、あくまでも学内だけの話にとどめておいた。だから、感謝してくれてもいいくらいだ。・・・僕は決して許さないだろうけど。
「そんなに好きなんだ・・・」
林田さんはぽつりと呟いた。・・・返事に困る。
「私も、誰にも負けないくらい沢渡くんのことが好きなんだけどね、嫌われちゃったね」
「僕以外にも、たくさん男はいるよ」
・・・何言ってんだ?この僕は。
「でも、他の誰よりも、沢渡くんがいいの・・・。彼女のどこがそんなに好きなのよ」
いや、それは・・・。でも、包み隠すとまた後で面倒なことになるかもしれない。
「理屈じゃない。彼女といる時だけは、何故か自然体な自分でいられるんだ」
「ふ~ん、沢渡くんが、ただの男になるんだ」
「そうだよ、期待に添えなくて悪かったね。・・・二度と彼女に近づくな」
「分かったわ、じゃあね」
気がつけば、いつの間にか林田さんは泣き止んでいて、高慢な態度に戻っていた。どこでどう間違ったんだ?ペースに乗せられたのは僕のほうだったのか?