最近学校では、深雪とのランチタイムに朝霧が同席することが当たり前のようになった。朝霧が例の事件の後深雪のことをとても心配してくれるようになったこと、そして僕もまた朝霧の将来のことについて心配していること、朝霧はいざとなったら空気のように存在を消すことができることから、同席してくれるように僕のほうから頼んだのだった。
「ねえ、希はドラマなんか・・・見てないか。今凄く面白いドラマがあって、若菜とはその話ばっかりしてるんだけど」
朝霧にも聞いてみたが、彼も見ていないという。そのドラマは高校が舞台になった恋愛モノで、深雪曰く、主人公にとても共感できるのと同時に、現実にはあり得ないストーリー展開にはドキドキさせられっぱなし、とのこと。
「本当に凄いの。どうしたらあんな展開を思いつくのかな?それに主人公の女の子が凄くかわいくて、嫉妬しちゃう」
名前を聞いてみたら心当たりがあった。
「そういえばこの間、テレビ局で会ったよ」
「え~~~!!!なおちゃんに会ったの!・・・どんな感じだった?」
声が大きいって。・・・僕は唇に人差し指を当ててから、
「普通に挨拶して、握手しただけだよ」
「え?・・・普通、誰とでも握手したりするの?」
「手を差し出されたら、断らないだろ、普通」
はは~ん、立派に嫉妬したな、これは。
「でも、彼女がお前に嫉妬するならともかく、お前が彼女に嫉妬することないんじゃないか?俺が好きなのはお前だけなんだし」
かぁ~っと赤くなってうつむく深雪がかわいい。でもよかった、共演の男がカッコイイとか言われたら、俺のほうが怒りで赤くなってしまうところだった。
「ねえ、なおちゃんかわいかった?」
朝霧!今度はお前か・・・。でも、かわいかったなんて言うと深雪の手前マズイので、
「自分の目で確かめろよ」
夜、そんなやりとりを話しながら加藤と夕食を取っていると、
「気持ちは分かりますよ。なおちゃん、かわいかったですよね~」
加藤、お前もか・・・。まあ、加藤は普段実に真面目に仕事をしてくれているので、そういうときめきがあってもいいか。