11/13 (日) 14:30 打ち合わせ

今日は事務所で打ち合わせ。芸能人としての第一歩を踏み出せたことが嬉しい。

「兼古大臣の秘書の方から連絡をいただいたから、大臣のことは何も心配することはないよ。君はドラマに向けて役作りすることだけを考えてくれればいい・・・でもその前に受験なんだよね。ドラマの撮影はちょうど3月の半ばからだから、それまでには合格してね」

はい。俺が初出演することになったドラマは4月から放送され、その中で殺人犯の役を演じることになった。

「それでなんだけど、殺人犯の役ということだから、ドラマが放送されるまで露出しないことにした。あくまでも放送されたときにデビューしたことにして、視聴者の興味をあおる作戦だ。“あの殺人犯カッコイイね・・・、ふ~ん、兼古祐輔っていうんだ・・・、兼古大臣の息子で、沢渡長官の部活の先輩だったんだって!”という具合」

いや、別に最後のくだりはいらない気がするが、作戦としては面白いと思う。要はインパクトが大事なわけだ。そのときに名前より先に演技で売り出してくれることは純粋に嬉しい。でも、

「グランプリの人にあって、俺になかったものって何ですか?直せるところとか、足りないところがあるなら、今のうちに改善したいと思うんですけど」

結果は謙虚に受け止めて、次に活かしたい。

「結局、あっちの彼のほうがその役のイメージに近かった、としか言いようがないね。でも、殺人犯の役は第二希望だった。実はこっちの役のほうがインパクトがあっておいしいような気がするんだ。正統派で勝負するよりも面白いよ」

沢渡の悪魔みたいなものか。考えてみれば、俺はこれまで部活ではあまり癖がない役を演じることが多かった。変わった役をやってみたいとも思ったのだけど、そう思うようになったのは2年の後半になってからで、その頃には主役をもらっていたから無理だった。殺人犯の役・・・、台本を読んでみないことにはまだ何とも言えないけれど、やるからには今までになかったような殺人犯にしたい。これから勉強だな・・・の前に、受験勉強をやらないと。

「それから大事なことだけど、撮影までに3キロほど痩せてくれる?もう少しシャープなほうがいいと思うんだよね」

分かりました。・・・痩せろ、なんて言われたのは人生初だ。別に太ってはいない、けど、例えば沢渡と比べると、身体が大きいということになるよな・・・身長が同じくらいだから、差がすぐに分かる。

「じゃあ、受験勉強頑張って。・・・合格しなかったら契約を取り消す、と大臣から言われているから、レッスン以外仕事は入れないことにした」

・・・ああ、やはり、まず闘うは、親父の影か。

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