一難去ってまた一難。
マスコミ各社に対しては、厳しい目を光らせているつもりだ。僕に関する報道でプライベートにまで踏み込んでいるものや、根拠がないものや、侮辱されたと感じるようなものには抗議をするようにしている。しかしどうにもならないのが、インターネットだ。
僕の名前を検索すると、それこそ検索しきれないほどのページがヒットする。テレビで僕を見てああだこうだ言っているくらいなら許そう、しかし写真が載っているものとなると、黙って見過ごすわけにはいかなくなる。しかもそれが隠し撮りである場合には、何らかの手段に訴えることになる。
「沢渡さん、こちらです」
担当者から見せられたのは、遠足に行ったときの写真が掲載されているサイトだった。それは仕方ないだろうと思いきや、写真の横にあるコメントがイチイチ毒々しくて頭に来る。
「実はこのサイトは、名前こそ同じであるもののアドレスは頻繁に変わっていまして、神出鬼没なサイトとして有名なのです。以前のサイトでは、沢渡さんのプライベートでの様子や、根も葉もない話が掲載されていたこともありました。そのたびにサーバー側に削除命令を出していたのですが、今回発信元を突き止めました。イスト学園内のコンピュータからでした」
イスト?遠足のときに空き缶を投げられたこととも関係があるのかな?
「直接学校に申し伝えましょうか?」
「少し検討させてください。資料をいただけますか?」
もともと仲が良くないイストとクリウス。しかしイストは陛下や結城の母校であり、毎年多くの入宮者を輩出してくれているので、対応は慎重にせねばならない。
とりあえず結城の元に行って相談する。
「先輩として情けないよ。そんな暇があったら、もう少し勉強しろよ」
結城は頭を抱えて弱っている様子だったが、
「この機会にイストに行ってみたいんだけど、ダメかな?」
と言うと、驚いたように顔を上げた。この短い日数の中で何度も接点を持つなんて、きっと何かあるに違いない。何より、あの早川という男がずっと気になっているのだ。
「今更仲良くしよう、なんてことを言い出すなよ。お互いいいライバル関係にあるから、今までやって来れたんだ。お前の力だけでどうこうなるものじゃない」
・・・そういうものなのかな?でも実際に雰囲気を味わってみないことには、何とも言えないじゃないか。