週末ともなればげっそりした顔をしている人が多いのだけど、殿下はご機嫌なご様子だった。
「いよいよ明日だね。楽しみだよ。沢渡くんは自然体のままでいいからね」
とおっしゃってくださっても、僕には何のことだかさっぱり。
「大丈夫だって。今までで一番印象に残る誕生日になることは間違いないから」
「いえ、深雪が側にいてくれたらそれだけで十分なのですが・・・」
すると殿下は上目遣いに僕をご覧になり、ためいきをつかれた。
「そんな寂しいことを言わないでよ。僕にもお祝いさせて」
「いえいえ、決してそのような意味では!僕のほうが申し訳ないくらいです」
よかった、じゃあ、また明日ね、と手を振りながら去って行かれる殿下に、しばし呆然。もちろん殿下がサプライズ好きでいらっしゃるのは存じ上げているつもりだけど、それにしても何か様子がおかしい。
と思い、結城の様子も伺ってみると、
「大丈夫、心配するなって。何かのときには俺の胸を貸してやるから」
と訳の分からないことを言われて、ますます混乱。でも、そこまで言われたら、
「もういいよ。開き直って、まな板の上の鯉のつもりでいるよ!でも深雪に何かしたら許さないからね」
「いや、それは・・・」
どうしてそこで口ごもる?・・・深雪も巻き込んだのか?
「響はおそらく、深雪ちゃんに会えるのを楽しみにしているんじゃないのかな?・・・俺もそうだけど」
はあ?こんなに盛り上げておいて、僕の誕生日を祝ってくれるのは二の次だって言うのか?・・・そうか、そうか、期待した僕がバカだったよ。
そんなわけで、深雪の声が聞きたくなった。
“ドキドキしてる。・・・いろんな意味で”
・・・そうか、一昨日のことをまだ引きずっているのかも。でもそれ以外にも、深雪は殿下のファンだし、迎賓館に来るのは初めてだし、・・・明日の内容のことも関係していて?
「深雪と誕生日を迎えられることが本当に楽しみだよ。俺もドキドキしてる。早く抱きしめたい」
“いやっ・・・それは、その・・・”
「ずっと俺だけのものでいてよね。・・・愛してる」
“・・・私も”
・・・これで今夜は安心して眠れそうだ。