今日は、出先で高校の時の恩師に会った。・・・何かがおかしい。
宮殿に帰ってくると、居ても立ってもいられず、結城の執務室へと駆け込んだ。
「俺は考えすぎだと思うけどな。たかだか夢だろ?今までに予知夢を見たことがあるのか?」
いや、ないけど、死ぬのは一度きりだ。だから前例がなくてもおかしくないのでは?しかし結城はあっさりとは受け流すことなく、落ち着いた様子で向き合ってくれていた。
「お前らしくないな」
・・・そうだよね。母が病気になったとき、死については散々考えたはずだった。死は遅かれ早かれ誰にも必ず訪れるものだ・・・もちろん僕自身にも。だから後悔しないように、一分一秒を無駄にせず生きてきたはずだった。なのに何故、この期に及んで動揺したりするのだ?あのときより随分大人になっているはずなのに。
「僕らしく行くなら、・・・幻影に踊らされている場合じゃない。今あるこの瞬間を大事に生きないとね。舞という、守ってあげなければならない存在もいるし」
「そうだな。頼むから、沢渡には不安に怯える姿なんて見せないでくれよな。議会前で少々ナーバスになっているみたいだから」
・・・はいはい。相変わらず、結城は二言目には沢渡くんの名前を出すよね。結局は僕の心配なんて二の次なのだ。
「だって、その様子で行くと、舞さんは特にそういう予感を覚えていないってことだろ?だったらお前の思い過ごしだろ」
あ・・・。そこで初めて気がついた。舞にはあの日言わずにおいたままだ。僕のほうも、今は忙しくて舞と過ごす時間がそう多いわけではないから、彼女が気にしているのかどうかすらよく知らない。
「今は一緒にいてあげることだよね・・・でも怖いんだ。よく知っているはずの舞が、知らない舞になってしまうことが・・・」
「でも少なくとも、宮殿にいる間は大丈夫だろ」
「それもそうだよね」
というわけで、自室に戻る。・・・そうだ、たかだか夢だ。現実ではない。こういう時こそ、いつも通りに生活することが大切だ。
「お帰り」
そしていつものように笑顔で迎えてくれる舞に、いつものようにただいまのキスをすると、
「ねえ、聞いてくれる?今日先生にお会いしたのよ。聞けば、私に会う前に貴くんにも会ったって言うじゃない?これは何かの巡り合わせかな?」
と言われてギクリとした。こんなことってあるのかな?偶然にしては出来過ぎている気がする。やはりこれは必然、運命めいたものなのか・・・。