そしてやって来たのは、宮殿の希の部屋。
「このリモコンを使えば、宮殿内の防犯カメラの映像をご覧いただけます。夕食は一緒にお取りいただくことになりますが、何時になるかはお約束できません。それまで、私がお相手いたしましょうか?それとも朝霧さんをお呼びしましょうか?」
「いえ、みなさんお忙しいんですよね。私のためにそこまでしてくださらなくても結構です。私、冬休みの宿題を持ってきましたから、ご心配なく」
加藤さんのお気持ちは嬉しいけれど、宮殿に呼んでいただけただけでも贅沢だと思うので、これ以上のことは望まない。
とりあえず、部屋のものは自由に使ってくれていいということだったけど、やっぱり希の仕事ぶりが気になって、しばらくテレビを見ていた。今日もひたすら会議や打ち合わせ。・・・難しそうな顔をしてる。音声までは聞かせてくれないけど、大変そうなのは分かる。なのに私は会いたいなんて言っちゃって・・・反省。せめて、と思って、私もできるだけ宿題を進めることにした。だんだん見ているのも辛くなっていったし。
希の机を借りて、シャーペンも借りて、消しゴムも借りて、宿題。そしたら何だか少し頭がよくなった気分になって、結構はかどった!そのうちに、希が戻ってくるとのアナウンスが流れた。
「お帰りなさい。お疲れさま」
うわ~、奥さんみたいなセリフだよね。
「ただいま。ありがとう。・・・でもご飯を食べたらまた仕事に戻るんだけど」
いいよ、そんなの。希のほうこそ、私のために時間を割いてくれてありがとう。・・・でも、抱きしめてくれたこの腕の中から、出たくないとも思ってしまう。
「深雪?どうした?」
いつまでも離れようとしない私に、希が耳元で囁きかける。
「会いたかった・・・」
「そうか、俺もだよ。来てくれて嬉しい。・・・そういうことなら、泊まっていけよ」
え?いいの?・・・でも、泊まる準備してこなかったし。
「宮殿には生活用品が買えるお店があるし、優秀なヘアメイクもいるし、問題ない。ただし、ご両親の了解だけはきちんと取るように」
「それは大丈夫だと思うけど・・・」
「だったら決まりだな。・・・楽しみにしてるよ」
希の目がキラリと輝いた。