12/31 (土) 23:00 右手

希はグレーのコートに黒いタートルのセーターと、黒いパンツ、チェックのハンチング、というコーディネートで、相変わらずカッコイイ!

「寒くないか?」

「うん、大丈夫。それにしても凄い人だね。・・・でも意外と希に気づかないみたい」

「俺だって普通の人だからな。・・・はぐれるんじゃないぞ」

結城さんから希に贈られた誕生プレゼントは、某テーマパークのカウントダウンチケット。警備上の心配はあるけれど、夜だし、暗いし、みんなそれどころじゃないし、俺も行くから!と結城さんが無理矢理許可を取り付けてくださったそう。年の変わり目を希と一緒に過ごせるなんて幸せ・・・。しかも外でデートするのも久し振り。

そして私の手をぎゅっと握って、園内を歩いて行く。ただ、今日のデートには一つだけ条件があって、それは、決して立ち止まらないこと。囲まれたら身動きが取れなくなるから、と。

いつからか、希はいつも私の左側にいるようになった。そして右手で手をつないできたり、肩を抱いたりしてくる。そして私が希を見上げるこの角度も、おなじみになってきた。

「うん?どうした?」

「一緒にいられるっていいね」

「そうだな。でも折角なら二人きりがよかったんだけどな」

「うるさいな、お前は!俺がプレゼントしたんだから、俺には干渉する権利がある」

「え?普通、プレゼントって相手に渡すものだと思うけど?いやいや、結城と話すのはもったいない。なあ、どこに行く?」

私の右隣にいる結城さんは、ひたすら大人のたたずまいで、周囲を威嚇している。迫力ありすぎ・・・なのに、私には優しい。じゃなくて、どこに行くか。このテーマパークは、地区ごとでさまざまな時代の町並みを再現していて、その時代の風俗を疑似体験できるようになっている。建築好きな希は前から興味があったみたいで、それを結城さんがくみ取ってくれたみたい。

「希はどの時代が好き?」

「俺は深雪がいる今がいいけど・・・、そんなこと言ったら、ここに来た意味がなくなっちゃうよね。俺としては、500年前くらいがいいな。深雪には当時の服装が似合いそうだ。お前は、かわいいから」

いやだ、もう、希ったら。ふわふわのドレスを着せたいってこと?・・・そうだよね、私はまだまだかわいい存在なんだよね。逆に希は綺麗だけど・・。

そのとき周囲から歓声が上がった。どうやら、希のことに気づいたみたい。

「沢渡長官、握手してください」

・・・希?離しちゃう?

「申し訳ありません。政治家としては握手するのが務めですが、一個人としては彼女を守るのが務めですので、お受けかねます」

ちょっと!と見上げたときの希の横顔は、とても穏やかだった。

「今の俺は、お前だけのもの」

うわっ、そんなセリフを耳元で囁くなんて・・・。

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