舞も絶対、分かっていてやっているに違いない。
ここ数日、あまりにも素を出し過ぎていることに自分でも驚いているが、本当は僕だってありのままの姿でいたいんだ。それに何よりも、これは新婚旅行、僕たちだけの時間なんだ。だから舞には、本当の自分を見せてもいいと思う。…これが最後になるかもしれないし。
「今日は何する?」
朝ベッドの中で、その温もりを離したくなくて彼女を抱きしめていると、
「今日は美術館に行きたい」
との反応。公共の施設は今日から開いているとのことなので、手をつないで見に行くことにした…のだが、昨日とは打って変わって、観光客で賑わっていた。中には、
「ご結婚おめでとうございます」
と話しかけてくるホーンスタッド人もいたりして、煩わしくないのかと聞いてみたのだけど、
「貴くんと一緒に見たいから」
と、あまり気にしない様子なので、僕としても意識しないことにする。
こうしていると、まるで高校の頃に戻ったかのようだ。あの頃はいつも、舞が新たなスポットを発見してきては、一緒に行って、僕も世間の流行を勉強していた。今では、世間の流行のほうが僕にコンタクトを取ってくるので、自ずと知ることになるのだが、その意味で僕はとても受け身な人間だと思う。周りの人たちに支えてもらっている上に、そのほうが僕にとっては当たり前になっている
「この彫刻凄いね。こんなポーズできる?」
舞は身体をひねって、そのポーズの真似をしようとする。
「これはあくまでも美を追求したものであって、現実的には不可能なんだよ。ここから、ここの長さと、あそこから、あそこの長さの比が同じで、最も美しい黄金比とされているんだ」
「さすが貴くん、もっと解説して」
あ…。昔見学しに来たときに解説していただいたことを、そのまま話してしまった。あの頃とは変わってしまったんだな。でも僕たちも、日々進歩しているんだ。今まで僕は、好意に甘えすぎていたのかもしれない。この関係がよりよくなるように、もっと僕も協力していきたい。
「でも、全部のことを知っているわけではないから、二人で一緒に勉強しようよ。ここの学芸員に友達がいるから、来てもらってもいい?」
「え~、何!そんなのありなの?…さすが皇太子殿下ね、顔が広い」
…いや~、実はさっきから視界の片隅でウロウロしているから、気になってしょうがなかったんだよね(笑)。