夜、王宮から迎えに来られたのは加藤さんで、予告通り希からの手紙を親に渡した後、向かった先は、住宅地にある一軒家だった。…何?普通の家だけど?と思っていたら、希が迎えてくれたから驚いた。
“Welcome to our Second House.”
え?もう始まってるの?
“Thank you for having me.”
“I’m glad to see you again.”
…さすが希、徹底している。恐るべし。
「…でも、折角来てくれたのに、そんな顔をさせたいわけじゃないから、まあ少しずつやっていこうか。あ、靴はそのままで、こっちにどうぞ」
うん…、ありがとう。…とドアの向こうに連れて行ってもらうと、それはエレベーターで、かなり下まで下り…、出ると、遊園地にあるような小型の電車が停まっていた。
「これに乗るの?」
「うん、俺もつい最近教えてもらったばかりなんだけど、あの家と宮殿は、この電車でつながっているんだ。響殿下も、息抜きというか密会のために使われていたようだよ。…もちろん、国家機密だから内緒な」
そりゃそうだよね。世の中、裏では凄いことになってるんだ…。
でもホントに、しばらくしたら電車が止まって、またエレベーターに乗り込んで、希が「自室」と言ったら、ドアの先には宮殿の希の部屋が広がっていた。…信じられない。
「会いたかった.…今日は遠慮せず一緒に過ごせるな」
希は私を抱きしめてキスをする…。確かに、本当に二人きりになれたのは久しぶり。
「まずはゆっくりご飯を食べよう。とりあえずお互い、日頃のストレスから解放されてリラックスすることが大切だよな。時間はあるし、余裕のないところを見せて深雪に嫌われたくないし…」
「だから、私が希のことを嫌いになるなんて絶対ないって。希って自信があるんだかないんだか…」
「でも、もう大切な人を失いたくないから…」
あ…。リビングには、響殿下ご夫妻の写真が飾られていた。確かに…。私も希を失いたくない。
「今日は、俺のためにそばにいて…。わがままでゴメン」
そうだよね。希のほうが、心を痛めているよね。
「いいよ。一緒にいよう」
そして、二人で食卓につく。