今日は学校に来ている。新入生歓迎会が近いので、部活に参加しなければならないからだ。
皇太子に就任してからは特に、学校に来るのが難しくなっている。しかし、気心知れた部員たちとの時間は、僕を何かとリセットしてくれるいい機会になっているので、忙しくても時間を割きたいと思ってしまう。
…もちろん、深雪に会うためにも。
今回の演目は「校則ゼロ革命」。あまり部活動に参加できないのと、僕や朝霧だけに注目が集まるのを避けることが目的で、群像劇を提案した。もし校則がなくなったらどうなるか、というシミュレーション劇だ。
「沢渡くん、ちょっと控えめすぎない?」
村野さんから、意見が出る。そうかな?
「今のままでは、沢渡目当ての観客に満足してもらえない気がするの。それに、沢渡くんが控えめの演技をすると、みんなもそれに引きずられて、全体の演技が小さくなってしまうのよね。だから、もう少しアクセントを付けたいんだけどどうかな?」
なるほど。
僕の役は、校則がなくなったからといって、行動を変えない人間だ。他の人間が羽目を外しても気にする様子を見せず、とにかく淡々と行動をする、いわゆるガリ勉タイプ。ただそれは学校内だけの話で、普段の彼はすでに事業を展開しており社交的な人間である。
「確かに、学校のシーンではおとなしいから、自ずとそうなってしまうのは仕方ないよね。じゃあ、反乱組とひと悶着起こして、本性をちょっと見せることにする?」
「それも、沢渡くんが普段は見せないような態度だと、面白そうね。深雪ちゃん、沢渡くんの意外な一面ってどんなところだと思う?」
え?何故にそこで深雪に聞く?…ほら、困っているじゃないか。
「それか、こんな沢渡くんを見てみたい、とか」
それは聞く相手が違うだろ。僕は深雪にすべてを見せている。しかもそれは、カッコ悪いところが多い。
「天然なところとか?」
途端に、他の部員たちも笑い始める。おいおい、待てよ。
「じゃあ沢渡くん、よろしくね」
何でそうなる。