「殿下、表情が緩みがちですよ」
加藤に言われて、そうか?と軽く両頬を叩いてみたりする。ダメだな。あるテレビカメラに笑顔をこぼして失敗したのはつい先日のことなのに、イカンイカン。学習しなきゃ。
深雪の誕生日以来身につけている、お揃いのブレスレット。普段づけできるようにと、KZにオーダーした。
幸い、クリウスはアクセサリーの着用を禁じていない。僕はすでに、右耳のカーフピアスと、左耳には陛下からいただいたサファイアのピアスを付けており、右の中指には、殿下の形見のリングをはめている。だから、ブレスレットが一本増えたところで今更特に問題ないが、深雪とお揃いだということにいつ気づかれるか。
気づかれたくないようで、気づかれたい。
「殿下。お願いですから、わざわざ余計な情報を提供して、事後処理に追われるようなことがないようにしてくださいね」
「でもいずれバレるよ、これ」
「殿下がお幸せそうにしているのは結構ですけれども、内緒のほうが楽しくありませんか?」
「そう言って、少しでも時期を遅らせようとしているんでしょ?…内心は、思いっきり見せびらかしたい」
「十分ですから!!!」
まあ確かに、昨日は普通に深雪とデートしてきたので、街で撮られた画像がSNSにも出回っている。でも深雪に害が及ばない限り、特に情報規制をするつもりはない。
「でもそれとは別に、加藤も、深雪にプレゼントを渡してくれてありがとう。結城からはハンドバッグを、加藤からは靴をもらったから、それに合うドレスをオーダーしたいな。いつにしようかな?」
「それほど急がなくても大丈夫ですよ。長い目で見て使っていただけるものを、と結城さんと相談して、プレゼントさせていただくことになったんです」
それはわかっているけど、
「深雪のお妃教育の計画も、少しずつ立てておいてね。タイミングとしては、高校を卒業すると同時に迎えられたらいいな」
「かしこまりました。私も、深雪さんをお迎えできたら嬉しいです。殿下。まずは、公私の区別をしっかりつけられるいい恋人になってください」
はいはい。相変わらず、加藤は厳しいな。でも、完全に浮かれてしまっている僕が足をすくわれたりしないように、これくらいがちょうどいい。