僕はあらゆる状況を想定しているつもりなんだけど、予想だにしないことが起こることも事実。しかも大部分はこの方が引き起こしているから、とても歓迎する気にはなれない。もっと嬉しいハプニングがあったっていいだろうに。
「ちょっとよろしいかしら?」
誘われるまま空いている部屋へと一緒に入る。久し振りにこうして至近距離で見ると、化粧が濃くなったんじゃないか?と思う。今となればどうしてこの方と付き合っていたのだろうと不思議に思えるくらいだ。その上まだ僕を嫌いにさせるつもりですか?
「あなたと付き合っていたことは、ダーリンも知っているから。気にしなくてもいいわよ」
またそんな・・・。普通は言わないでしょう。
「とても素敵な人なのよ。文学に長けていらしてロマンチストで、包容力があって、大人で・・・。私たちはめぐり逢うべくして生まれたのよ」
「そうですか、どうぞお幸せに暮らしてください」
僕は立ち上がってさっさとその場をあとにしようとした。そんな話を僕に聞かせてどうするんですか!有紗さんが結婚してくれれば会うこともめっきり減るわけで、清々しますよ。
「待ってよ、ひがんでいるの?」
はぁ?さすがの僕もカチンと来て、その勢いのまま振り返った。
「どちらがですか!仕返しなのか、負け惜しみなのか知りませんけど、醜いですよ。今のあなたには少しの魅力も感じません。失礼します」
懲りない方だ、もううんざりだよ。前々からそうだったけど、更に輪をかけて・・・。
言い過ぎたなんてまるで思わない、そのダーリンと早くお幸せにどうぞ。