9/5 (月) 18:00 身の程

「おはようございます、深雪です」

“・・・おはよう。・・・もう朝?”

「はい、メールで知らせてくれた時間です」

“・・・そうか・・・ありがとう。・・・今日は・・・部活に顔を出すよ”

え~!!!・・・だって会見があったのが1日で、それからまだ4日しか経っていないのに、学校に来ても大丈夫なんですか!?と一日中ソワソワしていたら、夕方本当に登場した!

「お~、沢渡!よく来たな。じゃあ、早速始めようか」

「はい、お願いします」

えっ?それだけ?・・・ミーハーしているのは私だけみたい。先輩方はみんなそれぞれの位置について準備をしている。そうですよね、希さんが来られる時間は短いんですよね。だから、時間は有効に使わないと。

・・・落ち着け、私。この間は役作りしなきゃって焦ってたくらいなのに、久々に生の希さんを見たら、それだけでときめいてきちゃってるし。・・・ダメダメ、希さんは冷徹な悪魔なんだから。

「凄くよくなってたよ。心配いらない」

練習が一段落着くと、希さんは私を隣の部屋に連れ出して抱きしめた。・・・さっきまでの血も涙もない悪魔とは違い、最近毎日見ているスーツ姿の沢渡長官とも違い、ジャージ姿の希さんは私が知っている希さんで、崩れそうになっている私を優しく受け止めてくれていた。

「すみません・・・また泣いちゃって」

「いいんだよ、いい演技だった。何度でもこうやって慰めてあげるから、遠慮しなくていいよ」

「・・・でも、いつまでも甘えていられません」

そして、希さんの胸をそっと押し返す。

「何、どうしたの?」

脚本が少し変わって、最初はただ怯えていただけのヒロインが、天使の力を借りて徐々に強さを手に入れていくことになったのに、このままでは強さを表現することができない。

「しばらく、私に優しくしないでください。ちゃんと演技できるように頑張りますから、それまでは・・・」

「でも・・・」

希さんは面食らった様子でしばらくそこにたたずんでいたけど、しばらくしたら、分かったよ、と言って部屋を出て行った。その瞬間、こらえていた涙が溢れ出して、私は床に崩れ落ちた。・・・先輩方の演技を見てて気づかされた。私はまだまだ役に入り込めていないってことに。

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