5/18 (月) 23:00 残業

晩餐会を目前に控え、宮殿内はいよいよ慌しくなってきた。特に、外交は僕の専門分野であり、陛下がかけてくださる期待も年々大きくなってきているため、僕の周辺は他の部署とは比べものにならないくらい殺気立っている。このままではみんな共倒れしてしまいそうだ。

「みなさん、夜も更けてきました。ここでひとまず、各部の経過を報告してくれませんか?」

報告ついでに担当者の表情を窺うと、疲労が色濃く出ている人員が結構出てきている。ここは思い切って、今日の仕事を打ち切ろう。進行状況はさほど悪くない。ある程度休養しないと、逆に明日以降の仕事に響いてくるに違いない。

「分かりました。今日の仕事はそれぞれキリのいいところで打ち切ってください。また明日お願いします」

ただでさえ、外交部門は他国との時差の関係もあって勤務が不規則で、労力を必要とする。無理は禁物。彼らにもし何かあれば、僕の責任になってしまう。

「お先に失礼いたします。お疲れさまです」

「お疲れさまでした」

一人、そして一人と、速やかに人が減っていく。僕が最後まで帰らないことを、彼らは知っているのだ。・・・僕も今日は疲れたよ。トラブルが起こるときは、次から次へと起こるものなのだ。

「響、終わったのか?」

もう何人も残っていなくなった部屋に、結城が入ってきた。

「はい、ご覧の通り」

言っているそばから、残っていた秘書たちも綺麗さっぱり姿を消した。

「あぁ、疲れた」

もう気を許しても大丈夫、とばかりに脱力して身体を椅子に投げ出すと、

「ごくろうさん。これは竹内から」

と、熱いおしぼりが手渡された。・・・目が疲れたので上を向いて目の上に載せると、湯気と共に疲れも逃げ出していくような感じがした。

「さ、帰ろう。まだ、明日も明後日もあるんだぞ」

「分かってるよ」

「ゆっくり風呂につかって寝なさい」

「・・・何?僕の面倒までみるつもり?」

結城は沢渡くんのお父さんなんだろ?僕までは頼まれていないはずだよ。

「何言ってんだ、バカ。今度の晩餐会の主役はウチの皇太子なんだ。お前が元気でなくてどうする?」

ううん、元気だよ、まだ。こう見えても、身体には自信があるんだ。

「結城より若いので、大丈夫です」

「コラ!まったく」

結城だって疲れているのだから、困らせないで、僕もおとなしく部屋に帰ることにしましょうか。

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