昨日、私たちは正式に恋人同士になった。
先輩はとてもジェントルで、礼儀正しく、「僕と付き合ってくれないか?」と言ってくれた。私が「はい」と答えると、優しく抱きしめて、唇に軽くキスをしてくれた・・・彼氏と呼べる人がいるなんて最高。しかも、テスト勉強も、先輩にポイントを教えてもらったからはかどっている。先輩ってありがたい。
それに比べて・・・。
演劇部の昼食会では、たまたま沢渡くんの隣になってしまい、ドキドキして食事どころではなかった。一応私も役者の端くれとして、平然と振舞うことはできた。でも、会うだけで、隣にいるだけでドキドキしていたら、話もできない。・・・何だか、だんだんこのドキドキが増してきているようで困る。入学当初のほうが、自然に話せていたのに。
そう考えると、私の彼氏は園田先輩でよかったのだと思う。話しやすいし、私のことを好きだって言ってくれるし、大切にしてくれるし・・・。
放課後、今日は図書館で一緒にお勉強。・・・図書館なら勉強机が仕切られているので、さほど怪しまれない。それに、授業が終わってすぐに帰るとなると他の人の目が気になって嫌だから、少し時間をずらせるのもいい。
「先輩のおかげで助かっています。実はこの前の試験はあまりよくなかったので」
「そうなんだ。でも、演劇部って精鋭揃いじゃない?勉強会とかしないの?」
「一応明日あるんですけど、沢渡くんは来られないそうなんです」
あ・・・、私何を言ってるんだろう。
「ふ~ん。彼は優秀だよね。きっと隠れて猛勉強してるんだろうね」
あ!・・・ウソ、何でここに。
図書館を出て生徒玄関に向かっていたら、たまたま前方を沢渡くんが通り過ぎるのが見えた。・・・どうして?今週は授業が終わるとすぐに帰っていたじゃない。・・・彼は私たちのほうを見ると、会釈をして、そのまま玄関へ歩いて行った。
うわ、絶対にバレた。私たちは手をつないでいたから、ごまかしようがない。しかも沢渡くんは、私たちに気づいてもすぐにいつもの表情に戻って、何事もなかったかのように歩いて行った。
先輩どうしよう・・・。私は思わず、先輩に抱きついてしまった。月曜日、どんな顔をして会えばいいのか分からないよ。
「どうしたの、まゆちゃん?」
そして先輩が、優しく髪を撫でてくれた。