そして午前中は部活へ。この頃特に思うことだけど、役に没頭しているときは、仕事のことも、クラスのことも、家族のことも忘れられるので、いい気分転換になっているみたい。しかし一旦役から離れると・・・、正直、気まずい空気が流れているのは確かだ。上柳さんは園田先輩と付き合うようになった。僕はいいことだと思ったのだけど、園田先輩が妙に僕のことを牽制してくるので困る。
僕が二人を見かけた日の次の週、僕は園田先輩から呼び出しを受けた。
「君と彼女の間に何があった?」
・・・単刀直入な人だ。
「何もありません。同じ部に所属しているだけです」
「彼女は君のことを好きみたいだけど?」
「ただ僕のほうは残念ながら・・・いい友達でいたいと思っています」
僕は言葉を選びながら答えた。彼女が僕のことを先輩に話すとは思えなかったから、先輩がどこまでつかんでいるのかを試す必要があった。間違えても、僕のほうから新情報を提供するなんてことは、避けなければならなかった。
「彼女は君に告白したのか?」
「はい、ですが断りました」
ふ~ん、と、先輩は僕を値踏みするように、じっと見つめてきた。
「だったら、今後は彼女に近づくな。変な気を起こさせないようにしてほしい」
・・・それは僕には関係ないことでしょう。先輩が彼女のことを幸せにしてあげればいいんですよ。でも同時に、ちゃんと彼女を好きなのだということが分かって、安心もしていた。・・・大企業の御曹司ともなれば、手段を選ばずモノにする、もしくは、遊びで女の子と付き合うことも多々あると聞いていたからだ。
幸い、それ以来先輩との接触はないが、僕としても彼女が先輩のことを好きになってくれることを望んでいた。そしてそのためには、彼女と距離を置くことが一番だと考えたのだ。でも彼女のほうも僕のことを変に意識しているようで、そうなるとこれは逆効果なのかもしれないとも思えてきた。一度話したほうが、しがらみがなくなっていいのかもしれない、と。