数日振りに宮殿に帰ると、やはりホッとした自分がいた。しかし落ち着く間もなく、新しくいただいた財務の仕事に追われ、やりがいはあったけど少し疲れた。
「さっそくやらかしてくれたそうじゃないか?」
夜、約束どおり宮殿のラウンジで結城と向き合うと、加藤から聞いたのだろう、一昨日のことについてあれこれ言われた。
「でも、あそこは一体何だったの?首都にもあんな場所があるなんて、信じられないよ」
我が国は世界有数の経済大国なのに、それとは無縁の廃墟の街・・・。
「数年前の不況の時に、あの辺り企業全部が倒産したんだよ。もちろん最初は一社だった。でもその倒産により影響を受ける会社が次々と、連鎖したように倒産した。・・・そんなこともあるんだ、急に足を掬われるようなことがな」
あの光景は決して忘れない。そこで働いていた人たちはどうなったのだろうか?そしてその家族は・・・?仕事には責任が伴う。明日は我が身かもしれない、そう心にとどめておかないと・・・。
「沢渡くん、学校はどう?」
そこへ、殿下がいらした。
「お前、書類に追われてたんじゃないのか?」
「僕にだって食事をする権利はあるんだよ」
また、バトルですか?・・・とそれはおいておいて、僕は入学式の後の出来事を話した。まだどうなるか分からないから黙っていようかとも思ったのだけど、殿下が先輩だというのは心強かった。
「多分、沢渡くんのことを警戒しているのだと思うよ。僕も最初はそうだった。奨学生だったから、他のクラスメートとは完全に住む世界が違ったわけだよ。でもそれも最初だけだった。僕はしっかり生徒会長も務めさせてもらったからね」
それは、殿下の人当たりのよさゆえでしょう。でも、これは僕にもチャンスはあるということ。・・・まだ一日しか行っていないのだから、これで判断するほうが難しい、くらいに考えておこうかな?