朝。ここはやはり、第一印象が重要だ、と思って、教室に入るときに「おはよう」と声をかけてみた。
「おはよう」
「お、おはよう」
・・・女の子の声はいくつか返ってきたが、男は僕のほうをチラッと見ただけでまたそれぞれ話に戻っていった。・・・本当に感じが悪い。明らかに人を値踏みするような目つきだ。
朝はそのまま講堂で、始業式があった。・・・その間に、今度は先輩方がじっと僕のほうを見る。・・・そんなに不思議な生き物なのか、僕は?
放課後、折角なので学校のあちこちを見てみようと廊下を歩いていると、掲示板が目に入ってきた。
“演劇部 部員募集!”
いたってシンプルなチラシだったが、僕には待ち望んでいた文字だった。
「朝霧、これだよ」
そこには、入部希望者を集めてオーディションをするので、17日金曜日16:00に講堂に来るように、と書いてあった。
「でもね、僕には演劇のことが全然分からないから、沢渡が合格したとしても一緒に入れないかもしれないよ?」
朝霧は僕のために、一緒に演劇部に入ると言ってくれた。
「でも僕だって演技なんてしたことないから、どうなるか分からないよ。それに、芸術のセンスは朝霧のほうが断然優れているわけだから、僕のほうが逆にプレッシャーを感じるよ」
しかし、またそこには、部活見学歓迎、とも書いてあったので、とりあえず明日見に行ってみることにしよう。・・・これは少し楽しみが出来た。
「もしかして、演劇部に入部希望?」
え?・・・声の主を振り返ると、あ、・・・写真で見た先輩が立っていた。
「はい。明日見学に伺ってもよろしいですか?」
・・・クリウスで初めて声をかけられた、と少々感激していると、相手が満足げに頷いた。
「ああ、もちろん歓迎するよ。君、名前は?」
「沢渡希です。そして、彼は友人の朝霧智史です」
「そうか。俺は兼古祐輔だ。明日楽しみに待ってるからな」
そして先輩はそのまま去っていった。・・・写真で見るよりずっと素敵な人だ、と僕は思った。何て言うか、オーラがある、みたいな。