4/22 (水) 18:00 彼女

1年生たちは、昼休みや夜もメールなどで実に熱心にビデオドラマについて打ち合わせをしているらしい。早くも大まかな流れが完成し、配役も決まったそうだ。テーマは、久々に再会した男女。高校に入学してみたら、幼なじみがいることに気づいた。しかし女の子にはすでに彼氏がいて・・・。主演、沢渡希、上柳まゆこ。この辺りは予想通りだな。

それでも今日はまだ3年がいるので、メインは全国大会に向けての準備である。2,3年は演技を詰めていくし、1年はその様子を見学したり、手伝ったり、発声や体力の基礎トレーニングをしたり、とやることはたくさんある。俺の今回の役は、不真面目な部員。練習を休むことが多くて結局役を降ろされるが、その腹いせに羽目を外しすぎてしまい、出場自体を危うくしてしまうという重要な役だ。しかし自分で言うのもなんだが、俺は派手に羽目を外したことなんてないいたって健全な高校生なので、役作りには少々苦労している。

「祐輔、一応2年の責任者はあなたも入っているんだから、もう少し協力してくれない?」

いつものように、帰り道彼女をウチの車で送ってあげていると、何やら噛み付いてきた。

「たかがビデオドラマじゃないか。ハプニングがあったら、それはそれで1年の実力を知る手がかりになっていいんじゃないか?」

「もうバカね。それはすなわち私たち2年の力不足ってことになるでしょうが。生徒会長候補だったら、もう少し大人になりなさいよね」

まだ立候補すると決めたわけじゃないって。・・・はいはい、美智は優等生、に対して俺は成績に関してはあまり期待できないダメな男ですよ。でも脚本を詰める作業は、美智のほうが向いている。俺は実際の演技について意見するほうが好きだ。

「あ、それか、私にそういう仕事を押し付けて、怖くて嫌な先輩に仕立て上げようとしているとか?」

もう、それは考えすぎ。

「そこまで計算高くないよ、俺は」

「分かった。役に入りすぎて、不真面目な部員になってるんでしょ」

あのな!・・・言い過ぎだ、それは。

「俺にだって、いろいろと考えなきゃいけないことがあるんだよ。別に沢渡の素性がどうだろうと関係ないじゃないか。それを聞きにくる連中をあしらうのが大変だよ」

「ねえ、沢渡くんは、国の奨学金をもらって、高校入学まであちこち留学していたらしいわよ。だから、今まで誰も知らなかったの」

え?そうなのか?・・・いつの間に聞き出したんだ?

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