明日からいよいよ撮影ということで、今日は1年生全員で夕食を食べに行くことにした。・・・部活が始まってからまだ10日ほどしか経っていないのだけど、すでに仲間意識が生まれていて、毎日の会話が楽しい。
「沢渡くんには幼なじみっている?」
・・・今日も上柳さんはあれこれと質問攻めにしてくる。
「いたよ。近所の子といつも一緒に幼稚園に行っていたかな?」
「その子とは、その後どうなった?」
え?
「それっきりだね。今更会ってみても・・・どうだろう?何を話していいのかよく分からないよ。・・・ちなみに、僕の幼なじみは男だからね」
僕もいろいろ考えた。あまり物事を隠しすぎると逆に知りたくなるのではないか、と。話せることは話しておいたほうがいい気がする。
「上柳さんは?・・・また会いたい人っている?」
「役の沢渡くんのような人は実際にはいないけど、いたら素敵だって思うわ」
「意外と、今まで意識したことなかった人が、いい感じに成長していたりして?」
「それ使える!」
え?
「気持ち的にはそのつもりでいるわ。久々に会った彼は昔とは違ってあまりにもカッコよくなっていたので、最初分からない。でもその後激しく動揺する・・・」
なるほど。
「もちろん、沢渡くんは昔からカッコよかったと思うけどね」
僕は昔からこの顔だから、よく分からない・・・。
「ねえ、髪はいつから伸ばしているの?」
「そんな昔のこと、よく覚えていないよ」
「そんな昔からなんだ。さぞかし目立ってたでしょうね」
・・・何だか楽しそうだね。僕には昔の記憶は曖昧なので、困るのだけど。