驚いた。学校生活だけでも大変なのに、有紗さまと付き合い始めたとは・・・。
「成り行きだよ。特に僕が頼んだわけじゃない」
・・・陛下の実娘相手に、よくそんなことが言えるね。あの方はヤバイ。僕は親しいわけでも何でもないけれど、それだけは分かる。
「でも、誰にも迷惑をかけていないから、悪くはないと思っている。週末に少し会うだけだし、僕たちのことは僕たちで解決するようにしているし」
「陛下には?」
「内緒」
「それから、上柳さんのことは?」
・・・普段はこんな感じで根掘り葉掘り聞いたりはしないのだけど、昨夜結城さんから念を押されたので、聞かないわけにはいかない。
「とりあえず、相手の女の子たちには注意をした。そして上柳さんには、今後も何かあったらすぐに言うようにと話しておいた。これからは僕も彼女の好意に甘えすぎないようにするよ」
・・・何やら、一騒動あったような口振りだね。いつの間に。
でも改めて沢渡を見ると、入学当初のおどおどした感じからは大きく変わっている。今ではクラスに意見もするし、男子からも声をかけられるようになっている。その姿には確かに自信を感じられるし、凛々しくもなったように見える。
「それよりも、朝霧まで巻き込んで悪かった。結城とはちゃんと話をするよ」
ほらやっぱり・・・。より頼もしくなったね。ところで、以前から気になっていたことがあった。
「その香りはもしかして・・・」
「ああ、有紗さんからいただいたものだ」
・・・なんだ、僕はちゃんと気づいていたんじゃないか。