そして僕がドライブの後にこっそり案内したのは、夜景が綺麗なレストランだった。もちろん本来なら彼のようなVIPを勝手に一般の店に連れ出したりしてはいけないのだが、僕だってVIPだ。そんな僕には行きつけの店がいくつもあるし、同じVIPが一人くらい増えてもさほど変わりはないと思う。表立って行くから注目されるのだ、他の人と同じようにさりげなく行けば、何の問題もない。・・・もちろん、ある程度の安全性を約束してくれる店しか選ばないが。
「最近、父が見合いをさせたがって困っている」
彼が言う、父、とはもれなく国王陛下のことである。
「モーリスに彼女はいないの?」
「残念ながら。こう外に出してもらえないと、出逢う機会もないわけだよ。かと言って、他国の王女とか、そういう堅苦しいのはもうこりごりだしね」
「お見合いの相手も、そういう由緒正しい方なんだ」
「そう。それに僕はまだ結婚したくない。国王を継ぐことができるのは光栄に思うけど、すべて父の意向通りになるのは嫌なんだ」
なるほど。これだけ大国の王子で外見も能力も優れているとなると、その依頼は多いに違いない。
「でもそれは、陛下への反抗心からなんじゃないかな?もし、外出もままならない生活が嫌だというのなら、愛しい人を内に入れてしまうという手もある気がするけど?」
「それは面白い考えだね」
モーリス殿下は身を乗り出してきたが、しばらくするとまた元に戻ってしまった。
「でもダメだよ。僕たちには恋愛が許されない。女性、イコール結婚を常に考えなければならないわけだからね。Takaはまだ例の彼女とうまくやっているのか?」
「うん。僕たちは順調だよ。ただ、結婚するとなるとそれは大変でね」
「そうか。君には付き合うのは簡単で結婚は難しい、僕にはその反対。・・・こうも違うものかな?」
確かに皮肉なもので、世の中うまく行かなくなっているのだ。ただそう考えると逆に、誰にでも困難なことがあるということで公平なのかもしれない。
「ねえTaka。君の彼女に会わせてくれないか?」
何を言い出すんだ、いきなり。
「君たちから、恋愛の極意を学ぼうかと思って」