5/22 (金) 23:00 不公平

そして僕がドライブの後にこっそり案内したのは、夜景が綺麗なレストランだった。もちろん本来なら彼のようなVIPを勝手に一般の店に連れ出したりしてはいけないのだが、僕だってVIPだ。そんな僕には行きつけの店がいくつもあるし、同じVIPが一人くらい増えてもさほど変わりはないと思う。表立って行くから注目されるのだ、他の人と同じようにさりげなく行けば、何の問題もない。・・・もちろん、ある程度の安全性を約束してくれる店しか選ばないが。

「最近、父が見合いをさせたがって困っている」

彼が言う、父、とはもれなく国王陛下のことである。

「モーリスに彼女はいないの?」

「残念ながら。こう外に出してもらえないと、出逢う機会もないわけだよ。かと言って、他国の王女とか、そういう堅苦しいのはもうこりごりだしね」

「お見合いの相手も、そういう由緒正しい方なんだ」

「そう。それに僕はまだ結婚したくない。国王を継ぐことができるのは光栄に思うけど、すべて父の意向通りになるのは嫌なんだ」

なるほど。これだけ大国の王子で外見も能力も優れているとなると、その依頼は多いに違いない。

「でもそれは、陛下への反抗心からなんじゃないかな?もし、外出もままならない生活が嫌だというのなら、愛しい人を内に入れてしまうという手もある気がするけど?」

「それは面白い考えだね」

モーリス殿下は身を乗り出してきたが、しばらくするとまた元に戻ってしまった。

「でもダメだよ。僕たちには恋愛が許されない。女性、イコール結婚を常に考えなければならないわけだからね。Takaはまだ例の彼女とうまくやっているのか?」

「うん。僕たちは順調だよ。ただ、結婚するとなるとそれは大変でね」

「そうか。君には付き合うのは簡単で結婚は難しい、僕にはその反対。・・・こうも違うものかな?」

確かに皮肉なもので、世の中うまく行かなくなっているのだ。ただそう考えると逆に、誰にでも困難なことがあるということで公平なのかもしれない。

「ねえTaka。君の彼女に会わせてくれないか?」

何を言い出すんだ、いきなり。

「君たちから、恋愛の極意を学ぼうかと思って」

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