昼休み・・・。今ならいいかと思って、電話をかける。
“はい。・・・どうかしたの?”
沢渡は返事をしたもののすぐに言葉を外国語に変えた。辺りに人が多いのだろう。
「いや、そうじゃない。テストの結果はどうだったのか、と思っただけだ」
クリウスでは、試験明けの朝、廊下に成績上位者が貼り出されるのだそうだ。
“何だ、僕のこと信用してなかったんだ”
別にそういうわけではないのだけど、単純に気になって。
“大丈夫、1位だったよ。2位とは20点差”
そうか。・・・できた生徒を持つと、変なところで苦労する。沢渡は入学試験でうっかり満点を取ってしまい、このままでは怪しいとの学園長判断で、点数を加減するようにと言われたのだった。実際、王宮での教育では高校卒業程度の課題はすでに済ませている上、何カ国もの短期留学のおかげで語学も堪能、専門分野である政治経済に関しては、現在の大臣クラスにもひけを取らない。・・・とは言え、沢渡には経験が乏しい。これは一般の高校生より劣るくらいだ。
「そのくらいならいいんじゃないか?」
“でも、ウチの担任は相変わらず僕に執着しているみたいで困っているんだ。彼にだけは事情を話しておくわけにいかないの?”
「担任はまだ若いんだろ?そいつにこれほどの重大事項を抱えきれるのかどうか・・・。やめておいたほうがいい。お前が何とか取り繕うんだ、分かったな」
“はい、できるだけやってみます”
「じゃあ、またな」
・・・あ、しまった。と思ってまた電話する。
“また~、どうしたの?”
「朝霧は何位だった?」
“ギリギリ30位。彼はまずまずだと思っているみたいだけど?”
・・・う~ん、せめて10位くらいにはいてもらいたいな。