俺たちはそのまま響の部屋に移動して、飲むことにした。
「沢渡と有紗さんの件について一度話し合おうと言っていたのに、いつの間に結婚を決めてたんだよ」
そんな大変なことに、どうして今踏み切ることにしたのだろう。
「僕もいろいろ考えたんだよ。結婚のことを決めたのはたまたまだったのだけど、すると、陛下も僕のほうに視線をお集めになるのではないかと思って・・・」
「黙認するってことか?」
うん、と響ははっきり頷いた。確かに、俺も迷っている。先日の晩餐会でもそうだったが、沢渡は女性の扱いに慣れていない。学校でも女の子のことで何かトラブルを抱えているらしい。ここでも経験のなさが露呈している・・・。
「でも相手が有紗さんというのはマズくないか?」
「そうは思うけど、どうやら沢渡くんも好きになっているみたいだから、止められないよ。人を好きになるというのは自然に湧き上がる感情で、誰かがそう仕向けたり敢えて好きになろうと努力するものではないのだから」
う~ん。さすがに響の言葉には説得力がある。
「それから、もし今後二人の恋愛が発展することになったら、陛下は喜ばれるのではないかと思うんだ。沢渡くんは前途有望だし、同時に息子のようにかわいがっている存在でしょ?いずれ有紗さんにとってもメリットは大きくなるはずだよ。ただ問題なのは・・・」
「俺たちが陛下に隠し事をするのは後ろめたいってことだな」
「そういうこと。あとで何を言われるか・・・」
そのためにも、響は陛下の気をそらす必要があると思ったわけか。なかなか考えたな。じゃあ、俺たちは見て見ぬフリをするか。・・・もちろん時々は、沢渡を問いただすことになるだろうが。
「分かった、そういうことにしておこう。・・・響、眠れそうか?」
「どうかな?興奮しちゃってね」
気持ちは分かるけど、もう少し寝たほうがいい。もう一杯付き合うとするか。