6/6 (土) 19:30 選択肢

しかし、宮殿に向かう途中で、嬉しさよりも重苦しさのほうが増していった。・・・土曜日といえばもう一つ、結城との夕食会も恒例行事なのである。これを乗り切らなければ、有紗さんには会えない。

“今日は響の部屋で”

というメールが来たので、殿下がいらっしゃるなら安心だという思いと、ラウンジを避けるとはよほど聞かれてはいけない話をするのか、という思いで、余計複雑になっていった。・・・そして日が暮れてゆく。

「最初に言っておくけれど、批判的な意見ではなくて、建設的な意見を交わすこと。いいね」

いきなり殿下がおっしゃるなんて、これは波乱の予感が・・・。ちらりと結城を見ると、目が完全に怒っている。テーブルを挟んでいなければ、拳が飛んできそうだ。

「それで、お前はどうしても有紗さんと付き合い続けたいというわけなのか?」

いきなりの直球攻撃だ。

「はい、僕は有紗さんのことが好きです。これ以上の理由がありますか?」

そっちがその気なら、こっちも強気で勝負だ。

「それは、肉体的な欲求からじゃないのか?」

うっ・・・。よくもそんなことがストレートに言えたものだね。

「失礼だよ、僕のことをみくびらないでくれる?結城には相談できないような悩みだって、僕にはあるんだよ!」

「・・・図星だったってワケか」

「どうしてそうなるの?今の僕の話を聞かなかったわけ?」

「だって、敬語が消えたから」

「違う!それは感情的になったからで・・・」

「つまりは、当たってたからだろ?」

はぁ?・・・ワケの分からないことを言わないでよ。違うって言ってるのに。

「俺だって男だし、高校生の頃があったから分かる。だから性欲は別に否定しない。ただな、陛下に隠したままなのはやはりよくないんじゃないかと思うんだ。お前らだけでなく、響や俺まで気がとがめる。すると、それはすなわち、今後の仕事にも支障をきたす可能性があるということだ。だからお前の選択肢は2つ。陛下にお話しするか、もしくは別れるか、だ」

・・・僕は、陛下に胸を張って申し上げることができるのだろうか?陛下にはお世話になっている。僕を入宮させてくださり、紆余曲折はあったものの育ててくださり、次期皇太子に任命してくださった。その陛下に、お付き合いさせていただいている、と申し上げることができるのだろうか?・・・僕にはまだその覚悟がない。

今だって、勢いがあったから言うことができたけど、「有紗さんのことが好きだ」と言うのに、とても勇気が必要だった。なのに、ましてや陛下に申し上げるなど・・・考えただけでも、胸がドキドキしてくる。僕の有紗さんへの想いは、所詮そんなものだったのか?確かに、快楽を求めているところはある。今まで知らなかった悦びを、もっと感じたいと思う自分がいる。しかし、そんな理由で有紗さんとお付き合いさせていただいているとは、とても申し上げられない。

「でも、まだ付き合い始めて間もないわけだし、いきなり決めさせるのは酷なことだよ」

「そう、だから、初めての相手に有紗さんを選ぶのは賢明ではない、って言ってるんだ。例えば学校の誰かと付き合っているとしたら、俺たちはきっとみんなで応援するだろう。しかし、有紗さんとなると相手が悪い」

・・・そんなこと言わないでよ。僕だってよく分からないんだ。

「有紗さんと話し合ってから返事をします」

今の僕には、そうとしか言えなかった。

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