「どうしたの?希」
僕はひどく惨めな気持ちで、有紗さんを抱きしめていた。
「僕にはどうしたらいいか分かりません・・・」
結城が言いたいことは分かる。確かにこのままでは、響殿下にまでご迷惑をおかけしていることになる。思い返してみれば、殿下も全面的に応援してくださっているわけではない。わざわざ別れなくてもいい、とおっしゃってくださっただけなのだ。それに・・・当の有紗さんも。先日の電話のとき、歯止めが効かなくなった僕を一旦制した。・・・そう、みんな大人なのだ。僕だけが、ただ感情に流されている。
「折角会えたのに、約束が違うじゃないの」
今はとてもそういう気分では・・・。
有紗さんは僕をソファーに座らせ、指を絡めてきた。彼女もまた、僕を直視することなく何かを考えているようだ。
「あなたがそこまで気にすることはないわ」
・・・いえ、そんなことはありません。僕には気づいたことがあります、それはあなたを抱くことだけを考えていたということ。万が一のことがあったら責任を取れるのか、そこまでは考えていなかったということ。
「すみません、僕がまだ子どもなばかりに・・・」
「いいえ!それなら、私が一方的にあなたのことが好きだということにすればいいわ!あなたは私の気持ちに応えてくれただけだった、ということなら、誰にも迷惑がかからないでしょう」
・・・それは、どういう意味ですか?
「私がすべて責任を取るわ。だって私のほうが大人ですもの、それくらいのことはできる。・・・そしてあなたは、私の求めに応じる。それだけで、あなたの欲求も満たされる」
有紗さんは、僕の膝の上に乗って、唇を求めてきた。・・・確かにそれだけで、今までのモヤモヤが吹き飛んでしまい、脳の髄がしびれてくる。
「あなたにはクヨクヨ考えすぎるところがあるわ。そのためにも、私が必要・・・違う?」
今は悪くない気分・・・それどころか、気分は上々だ。
「ただ、あなたも我慢を覚えて。私たちは普通の恋人ではないの。あなたには、週末だけ私を受け止めてくれる、ジェントルで、男らしく、逞しい男性でいてほしい」
すがるような男ではなく、受け止められる男に・・・僕もなりたい。