本番まであと2日。今の私たちに必要なことは、集中力を高めること。ミスは許されない。
でも心なしか、祐輔の表情が冴えない気がする。大分、神経をすり減らしているみたいだ。
「ねえ祐輔。全国大会に進めたら、どんなお祝いをする?」
夜、改めて心配になったので、電話をかけてみることにした。
「え?でも全国大会に進むのは当然のことだろ?」
「それはそうだけど、全国大会に向けて更に頑張るために、軽いごほうびは必要かな?って」
「ごほうびねえ・・・」
う~ん、と祐輔が考える。役割的には演出家のほうが大変かもしれないけれど、幕が開いたら舞台上の人の仕事がすべて。私は見ているのみ・・・。だから、何かごほうびをあげたいと思って。
「美智は、俺に何かほしいものとかないわけ?」
え?私が?
「美智は性格的に他人をプロデュースするのが好きなのかもしれないけれど、俺だってたまには男らしいことをしてみたいって思ったりするんだよ」
祐輔が?男らしいことを・・・?そんなことを急に言われると、ドギマギしてしまう。今更そんな仲でもないというのに。
「いいよ、私は。全国大会で優秀な成績を収めてほしいだけ」
「優秀って、何位以上のこと?」
・・・それはもちろん優勝したいけど、現実的には難しいんじゃないかと思う。
「せめて3位以上」
「美智は優勝できないと思ってるんだ」
「そんなこと言ってないわ。3位以上だと表彰してくれるじゃない?だから」
「ふ~ん、なるほどね」
「祐輔にしてもらいたいことはあるけど、まだ無理だから」
え?何?と祐輔が聞きたそうにしているのは分かったけれど、こればっかりは法律的に不可能なのだからしょうがない。
「教えろよ、気になるじゃないか」
「じゃ、全国大会で優勝したら、教えてあげる」