「沢渡さん、あまり無茶はなさらないでください」
地区予選のあとロビーで人波に襲われそうになって以来、加藤がべったりついてくるようになった。・・・あの時は、加藤と仕官数名が係員のフリをして、僕と朝霧を守ってくれたのだった。僕としては自分自身よりも朝霧の腕に何かあったら大変だと思っていたのだけど、加藤に言ったら怒られてしまった。
「何をおっしゃるのですか。私の仕事は沢渡さんをお守りすることです」
そう言ってくれるのは嬉しいけれど、加藤に鍛えてもらっているから大丈夫だって。しかも、宮殿内でもついてくることはないのに・・・。
「働きすぎですよ。もう少しお休みを取ってください」
「大丈夫。授業中には気を緩めているから」
「またそんなことおっしゃって。お若いから元気なのは分かりますが、長丁場なのですよ。お仕事だけではなく、演劇の練習もあるではありませんか」
「だから大丈夫だって。当の僕が言うんだから平気だよ。・・・あ、それか、僕がおとなしくしていないと、加藤の休みがなくなるもんね。いいよ、加藤は休んでも」
「沢渡さん!」
・・・加藤が本気で怒ったようだ。
「明日も学校があるのですよ、今日のところはお休みください!さもないと・・・、強硬手段に出させていただきます」
「そんなに怖いこと言わなくても・・・」
ギロリ、と加藤が睨んできたので仕方ない、ベッドルームに移動することにする。何も、僕の睡眠時間まで管理しなくても・・・。わざわざこんな時間に僕の部屋まで来なくても・・・。折角調子が出てきたところだったのに。
「どうぞ、うつぶせに」
はいはい。こんなに頭が冴え冴えでは眠れるわけがない。でも加藤のために寝たフリをしようか。
「凄く凝ってますよ」
うわっ、痛い・・・けど気持ちいい。背中から肩、首・・・身体が浮いていきそうな感じがする。気持ちいい・・・。そしてだんだん意識も薄れていく・・・。