僕の役はいかにもな王子さまタイプ・・・らしいけど、「今のままの沢渡くんで大丈夫よ」なんて清水先輩は笑って言う。僕ってこんな感じ?
でもやるからにはもっと王子さまらしくしたい!ただ、どこまでが許容範囲なのかよく分からないので、みんなから意見を聞く。
「沢渡にはバラの花が似合う!」
と言ったのは兼古先輩。・・・いつまでも引っ張りますね。
「上柳さんをお姫さま抱っこしたときの様子は、まるで絵本の王子さまのようだった」
更に清水先輩。あれはやむを得ずですよ。
「王子を突き詰めるには、もう少しアクセサリーがほしいかな?」
これは部長からなるほど、石のついた指輪とかを用意してみようかな?
「ここまで来たら、服も王子用に替えてみようよ。沢渡くんは身長が高いから、丈の長いジャケットが似合いそう。後は時々外国語を混ぜて」
・・・村野さんのほうが楽しんでる感じだね。
「キスとハグ・・・。あれは見ているこっちが恥ずかしい」
・・・朝霧?
「前から気になっていたんだけど、結城さんとの抱擁は熱すぎる」
あれは結城が勝手に・・・。
「もう少し笑顔がほしい」と言ったのは上柳さんだった。
「穏やかで優しくて美しい王子を、女の子なら期待するわ」
言ったそばから頬が紅く染まっていく・・・。僕には笑顔が足りないのか。
「でも強さもほしい・・・けど、沢渡くんはすでに持ってるもんね」
・・・ああ、あれね。学校では使わないようにしようと思っていたのについ・・・。どこからか加藤にも漏れていて、あの時も注意されたっけ。でも手は寸止めだった。
「沢渡くんはれっきとした王子だよ」
何かを思い出したのか、ますます顔を赤らめながら、上柳さんは立ち去っていった。・・・やっぱり横抱きにしたのはマズかったかな?・・・にしても、何でお姫さま抱っこって言うんだ?
王子の研究と言えば、僕は本物の王子にもお会いしている。特に先月の晩餐会でのモーリス殿下は、万人が憧れる王子さまだと思う。そしてまたモーリス殿下と楽しそうにお話しされていた我らが響殿下も、もちろん素敵だ。僕も殿下から社交性を学ばなければならない。・・・そう、ヒントは近くにたくさんある。