6/27 (土) 23:00 ピアノフレーズ

このところ陛下のお仕事が忙しいので、有紗さんもなかなか宮殿にいらっしゃらない。よって今夜は一人・・・。お風呂あがりにピアノを弾くことにする。

入宮してすぐ、情操教育だか何だかで、僕はピアノを習わされた。最初は特に好きでもなかったけれど、いつの間にか一人の時間にはピアノを弾くようになっていた。もちろん、特にコンクールを目指しているわけでも、誰かに聴かせるためでもない。ただ、自分のためだけに弾く。だから、感情によってテンポが左右されたり、勝手に次の曲に行ったりするのだけど、それはそれで構わない。気持ちが昂りすぎているときには発散できるし、嬉しいことがあった時には更に気分がよくなるし、・・・でも、落ち込んだ時には、そのまま寝てしまう、か。

今夜は穏やかな曲から。

昨日は大騒ぎしながらも、イメージをいくつかに絞り込んだ。ただし、そのまま写真をあれこれ見せると怪しいので、まずは今日の部活でそのうちの一つを披露してきた。・・・そうやって、土曜日の午前中にある部活で試して、反応を見てみることにする。・・・一番楽しんでいたのは清水先輩だったかも。でもいつもと違った自分を見せたり、他人の反応を見たりするのは面白いと思った。一口に王子と言ってもいろいろある・・・殿下直々にご指導してくださった。

そして仕事のほうは・・・まずまずかな。少しは役に立てていると思う。

以前から知っていたことだけど、殿下は常に人とお会いになっている。宮殿にいらっしゃる時にも、入れ替わり立ち代わり誰かが訪ねてくるので、殿下はそれぞれに的確な指示をされたり、意見を求めたりなさる。しかも相手によって、厳しい顔をなさったり、逆に非常に親しげに接していらしたりと、態度を変えていらっしゃるのが興味深かった。そこで思ったことは、殿下は演じるのが上手でいらっしゃるということ。これが処世術なのか・・・ということは、僕も身につけなければならない術ということである。

実際、僕に接する顔も普段と仕事の時とでは違うから、僕も気持ちが引き締まる。そういう雰囲気作りはとてもお上手だと思う。殿下はどこで気分転換なさっているのか。・・・それはやはり舞さんの存在なのだろう。でも僕はお会いしたことはなく、殿下自身もあまりお話にならない。どのくらいの頻度でお会いになっているのだろうか?・・・電話かメールかな?

すると僕も有紗さんに会いたくなってきた。でもあまり期待しすぎてはいけないことも分かってきた。僕たちは時々恋人。求め合うのではなく、慰め合う恋人。・・・しかしノスタルジックなフレーズが会いたさを募らせる。今頃何をしているのか。彼女も僕に会いたいと思ってくれているのかどうか・・・一人の夜はピアノが話し相手になってくれる。

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