6/29 (月) 23:30 出逢い

教師になりたいというのは小さい頃からの夢だったので、校長先生に、来年の春で辞めさせていただきたいと申し上げたときには心が痛んだ。でもちょうど担任しているクラスが6年生なので、タイミングとしてはとてもいい・・・そのことを貴くんも考えていてくれたのかもしれない。

結果、校長先生は申し出を受けてくださった。でも、他の先生との兼ね合いを考えて当面は内緒。それから理由は一身上の都合。お決まりのように「結婚なさるのですか?」と聞かれたけれど、「勉強したいことがありますので」とお話しした。・・・お妃教育があるのだから、間違ってはいない。

貴くんと出逢ったのは高校1年のとき。教科書を忘れてきた彼に、机をくっつけて見せてあげたのが親しくなるきっかけだった。・・・忘れたと気づいたら他のクラスの友達に借りに行けばいいのに、気づいた時にはすでに先生がいたから、だなんて、本当にそそっかしいのか計画的なんだか。でも彼は明るくて、気さくで、人気者だったから、親しくなれて嬉しかった。

ただ、貴くんとは友達としての付き合いが続いていた。彼には飄々としたところがあって、のらりくらりと質問から逃げる。いつも冗談とも本気ともつかない言葉で笑わされているばかりだったので、異性というよりは男友達の一人として見ていた。ただいつの間にか、昼食は一緒にとるようになっていたり、時々は一緒に学校から帰るようになったりした、そんなある日、

「僕たち付き合ってるのかな?」

と、突然聞かれた。また冗談?と思ったから、

「頼まれたことはないわよ」

と言ってみたら、辺りに人がいないのをいいことに、いきなり手を取り片膝をついて、

「僕と付き合ってほしい」

なんて言うから、私は思わず彼を立ち上がらせる羽目になった。・・・恥ずかしいじゃないの、そんなの。でも、彼が立ち上がったあとで、私はその胸に飛び込み言った。

「喜んで」

・・・ずっと待ち望んでいた言葉だった。

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