7/4 (土) 23:50 王宮の秘密

我が国の国家機密の一つ、なんて貴くんが笑って言うのはセカンドハウス。首都のある住宅地の一角に立っている普通のお宅に入っていくと、気のよい老夫婦が迎えてくださる。でも実は宮殿と地下鉄でつながっているというおまけつき。ただし、王宮の人でも、高官にならないと利用できないどころか、その存在すら知らない人がほとんどらしい。・・・高官のための、密かな息抜きということみたい。

そんなわけでそのセカンドハウスに行くと、ちょうど貴くんもやってきたところだった。彼は白のサマーニットに黒のパンツ、髪は一つに結んでいる。

「会いたかった」

その優しい声と抱擁に、しばし身を預ける。愛しい温もり・・・離れたくない。

でも彼はやはり相当疲れている。また少し痩せたみたいだし、自慢の声が少々かすれている。

「座ったほうがいいよ」
「そうかもね」

ソファーに腰を下ろすと、再び私を抱き寄せる彼。・・・寝かせてあげたいけど、折角会えたのだからもう少し一緒にいたいという気持ちがあるし、私が直接言うと彼の機嫌を損ねてしまいそうなので、なかなか言えない。

「そうだ、僕の部屋に来ない?」

貴くんの部屋に?

「うん、どうせ誰にも会わないし、僕の権限で大丈夫だと思う」

え~、そんなことをしてもいいの?宮殿のセキュリティーチェックは厳しくて、耳につけているカーフピアスのID照合なしでは、ドアも開かないと聞いている。・・・こんな時に、皇太子の権限を使ってもいいのかしら?

「こんな時に使わなくて、いつ使う?それに、舞ももうすぐ宮殿の住人になるんだから」

え・・・。でも貴くんは即断即決、有言実行。私を連れてドアの横についているボタンを押すとエレベーターに乗り、地下のホームに下りた。そして、一両だけのかわいい乗り物にしばらく乗ると、さっきと同じつくりのホームに着いた。ここが本当に宮殿の地下なの?

そして再びエレベーターに乗ると、彼は「自室」と声を発した。それだけで箱は上に動き、しばらくすると横にも動いてドアが開いた。

「ここが僕の部屋だよ」

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