「すご~い。その人、凄くいい人だよね」
放課後にカフェに行くかどうか、私は迷ってしまっているので、友達に相談してみることにした。
「そうだよ。強引じゃなくて、礼儀もわきまえてるし。・・・それで、行くの?」
「まだ分からない」
私はふと、沢渡くんの席に目を向ける。・・・いない。またどこかに行っている。いくら私が沢渡くんのことを好きでも、この想いは決して報われない・・・。そんなの悲しすぎる・・・。
「まゆは、そんなにも沢渡くんのことが好きなわけ?」
急に声を潜めて聞いてきた。・・・そんなにも、なのかよく分からないけど、好きなことは確かなので頷いておく。
「でも正式にフラれちゃったし」
「そのわりには、まゆを特別扱いしているよね。・・・お姫さま抱っこしてもらえたのなんて、クリウスにまゆだけだよ」
・・・思い出すだけでも恥ずかしい。あれはたまたまだよ。でもあの話がどこからか広まっていて、時々冷たい視線を浴びるようになったのも確か。沢渡くんに近づくと、何が起こるか分からない。私のことを気にする、とは言ってくれたけど、周りから私を守ってくれるほどの王子さまではない。・・・あくまでも友達として。
「でも、今回のことは、特に断る理由がないし・・・会うだけ会ってみようかな?」
「それで、沢渡くんのことを忘れようと思って?」
・・・もう、そんなにはっきり言わないでよ。
「悪い人じゃなさそうだったし・・・ううん、どんな人なのかよく知りもしないで決めるのはどうかと思って」
「まゆ・・・それ、人がよすぎる」
え?
「断るときは早めに断らないと、厄介なことになるよ」
「何かそれで痛い目に遭った?」
痛い目、と自分で言ってビックリした。文字通り痛い目に遭うこともある・・・うわ、恥ずかしい。・・・もしかしたら、経験者なのかな?興味はあるけど・・・違う、違う。まずはどんな人か気になるから。