園田斎(ひとし)さん、陸上部で長距離の選手、細身に日焼けした肌、精悍な顔立ちで、爽やか系。趣味は旅行、長期休暇の時には必ずどこかに行くそう。
私のことは、初めはどこかですれ違ったそう。そして演劇の地区予選を観に行ったら、私が出ていることに気づいた、と。
将来は、家の会社を継ぐんだって･･･会社名は聞かなかったけど。
･･･うん、悪くない人だと思った。沢渡くんとはまた別のタイプの人。体育会系で、オープン、かつ何でも話してくれる、裏表のなさそうな人。話も普通に楽しかった。初めて話したのに先輩はリードが上手で、話題には困らなかった。
でもだからと言って、付き合うのかというとそれは･･･。
「友達から始めるというのもありかもしれないよ」
確かに、一緒にいると楽しそうな気はする。でも･･･、沢渡くんの席を見ると、今日はいた。クラスの男子に囲まれて、何やら楽しそうに話している。その笑顔を見るだけでドキドキしてくる。
「沢渡くんと比べちゃダメ。いつまで経っても忘れられなくなるよ」
「そう。悪くないと思うんだったら、付き合ってみてもいいんじゃないの？･･･じゃないと、楽しい高校生活が、辛い片想いだけで終わっちゃうよ」
「ちなみに調べてみたけど、園田さんのお家って凄いらしいよ。お父さまの会社は･･･」
聞いたことある。TVCMでもよく流れている。そんな大企業の跡取り息子なんだ。･･･沢渡くんのお父さんって、本当に普通のサラリーマンなのかな？でもそんなことより、本人が素敵ならそれでいいと思うんだけど。
ああ、迷う。中学生の頃に付き合っていた人がいたけど、沢渡くんに出逢って初めて、これが本当の恋なんだって分かった。でもこの恋は絶望的･･･。
よかったら一緒に帰ろう、なんてまた言われているけど、どうしようかな？このままじゃ試験勉強もままならない。でも今だけは帰りが早いのだから、少しくらいいいかな？彼氏の一人くらいほしいもんね。