何故か、今回の議会は出だしが悪くて頭が痛い。・・・そんな小さなことにこだわっている場合ではないよ。他に決めなければならないことが山ほどあるのに。でも今は、仕事のことは考えないことだ。一時的に頭を空にすることで、次にいい考えが浮かぶことがある。
風呂上がりに、僕はマッサージを受けていた。・・・今日はさすがに疲れたなあ。
「竹内、悪いけど、週末はぱぁ~っと遊ぶからね」
「殿下、早くも週末のお話ですか?まだ月曜日ですよ」
だって、楽しいことを考えないと、やっていられなくなるから。
「それで、どちらにお出かけですか?」
僕は高校時代、バンドでボーカルを務めていた。もちろん入宮したことでバンドを抜けたのだけど、当時の仲間とは今でも連絡を取り合っている。そしてそのうちの一人が新たなメンバーを募って活動を続けていて、今やヒットチャートを賑わせている。
「祐一から、この間メールをもらったんだよ。この土日に首都公演があるから来ないかって。その時はためらっていたんだけど、もうこうなったら、行くしかない。竹内、よろしくね」
「よろしくね、とおっしゃいましても・・・」
竹内はブツブツ言っていたが、止められても聞かないことは、彼にも分かっているはずだ。
「殿下がもし入宮されなかったら、バンドを続けていたと思われますか?」
どうかな。確かにとても楽しくて歌うことは気持ちよかったけど、プロになるまでの意志はなかった。そうなると逆に、祐一には迷惑だったに違いない。今も仲良く出来ているのは、僕が辞めたからだ。仕事のことでケンカしたくない・・・彼とは。
「でも、大きい会場のステージに立つのは気持ちいいだろうね。・・・そうだ、彼に花束でも持っていこうか」
「アンコールの時にですか?でも、議会が大変な時にそんなことをなさると、何を言われるか・・・」
「そのためにも、頑張るから、ね」
目標ができればこっちのもの。明日から頑張るぞ!・・・でも。
「痛いよ。もう少し優しくして」
「あまり興奮なさいますと、また眠れなくなりますよ・・・」