そして僕は、沢渡くんの部屋へと足を運んでいた。急に思い立ったので、着替えたりする必要はないよ、と電話で話しておいたら、バスローブ姿で髪を拭き拭き、セクシーに登場してくれた。
「沢渡くん、いい男になったね」
「すみません、お風呂上がりで」
それも当然だ。このところとても暑い日が続いているから、僕もとりあえずさっきシャワーを浴びた。・・・けど、それにしても綺麗な脚だね。
「ところで相談なんだけど、結城の誕生日はどうする?」
金曜日は結城の誕生日。相変わらず仕事三昧で彼女がいない彼には、僕たちがお祝いをしてあげなければならない。
「実はまだ迷っているんですよ。このところ特にピリピリしているので、気持ちを解放させてあげなければと思っているのですが、なかなかそれが難しくて・・・」
「沢渡くんの好意なら、彼は何でも喜んで受け取るよ。・・・そうか、二人水入らずのほうがいいかな?」
「殿下、何をおっしゃっているのですか。ご一緒してくださいよ」
いつもながら、あの険しい面は、沢渡くんのためだけに緩められる。・・・つくづく沢渡くんには弱い。そんな彼も、僕同様に疲れていることは確かだ、だから誕生日に期待しているかな?・・・いや、すっかり忘れてしまっているかもしれない。・・・その可能性大だ。
「そうだ、沢渡くん、誕生日に何をしてほしいか聞いてみて」
「いいんですか?そんなことをしても」
「いいんだよ、結城に誕生日の存在をそれとなく思い出させておいて。それでね・・・」
ここからは内緒。・・・いかに驚かせるかが、ポイントだ。
「分かりました、やってみます」
「よかった、よろしくね」
沢渡くんもその気になってくれてよかった。・・・よし、部屋に帰るか、の前に。
「お願いついでに、一曲だけでいいから聴かせてくれない?」
「はい、構いませんよ。どんな曲がよろしいですか?」
朝霧くんのヴァイオリンはもちろん絶品だけど、沢渡くんの個性的なピアノも好きだ。
「そうだなあ、海をイメージさせる曲がいいかな?」
波の音と共に・・・、眠りに引きずり込まれたい。