7/16 (木) 22:00 会食

こんな時に弱みを握られたらたまらない。昨夜はおとなしくドクターの診察を受け、早々に寝かせてもらった。そのおかげか今日はなかなか調子がいい。相変わらず、睡眠障害の原因は心因性のものだろうというだけだが。

そう思うと、沢渡くんは大丈夫なのかと少々心配になる。楽天的志向の僕ですらこうなのに、神経質な彼が重職についたときにはどうなることやら、と。しかし、今回の働きぶりは、実に頼もしい。彼の仕事は速くて正確だ。ただ、今後の彼の仕事は、秘書としてではなく、政治家として周囲の人間とのコミュニケーションを大事にしながら、新しいアイディアを提案し相手を納得させることなのだから、やはり社交術をしっかり身につけてほしいと思う。

今夜は、ある長官との会食に沢渡くんを同行させた。長官は僕と年がそう変わらないので、手始めにはいいかと思って。

「沢渡さんは、いつから政官コースに入られたのですか?」

「正式には12歳からです」

「まだ3年しか経っていないのに・・・凄い出世ですね。殿下を凌ぐほどかもしれません」

「長官、またご冗談を。私は殿下の元で、これからじっくり学ばせていただく所存です」

「・・・何とも、優等生的な発言ですね」

まあ、それは確かに。

「ですが殿下、私が聞いているのは、よい印象ばかりではありません。まだまだ、課題は多いようですよ」

・・・本人がいるところでその話をするとは、長官らしい。

「長官は、沢渡くんのことをどう思われていますか?」

「私はですね・・・」

長官は僕の隣の沢渡くんを、じっくり品定めするように見た。

「沢渡さんに伺います。今日の議会はいかがでしたか?沢渡さんがもし殿下ならどうなさいますか?」

またそんな、きわどい質問を。・・・沢渡くん、どう答える?

「私が皇太子でしたら、・・・響貴久さんという方を、仕事のパートナーに選びます。そしてその方と、これから明日の作戦を練ります」

何だ?その答えは。面白いけど、少々・・・。

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