一緒にいる時間が長いのに、なかなか知りえないこともある。
合宿では二人部屋が基本なので、もれなく沢渡と一緒に部屋になった。すると、彼も部屋に入るなり遠慮なくパソコンを広げて、あれこれ仕事を始めた。今回の議会にはあれこれ協力しているらしい。さっきまでとは打って変わり、真剣な顔になっている。
「ゴメン、うるさいかな?」
そして彼は急に手を止め、僕を振り返った。
「だったら負けじと、僕もヴァイオリンを持ってくればよかったかな?」
一瞬辺りに沈黙が流れる。
「ゴメン、冗談だって。どうせ僕がやめてくれと言ったらやめてくれるんだろうけど、その分僕が寝静まったあとで仕事を再開するんでしょ?そんなことをしていたら身体が持たないよ」
「朝霧・・・ありがとう」
「その代わり質問に答えて。上柳さんが園田先輩と付き合っていることについてどう思ってる?」
は?と、彼が顔を一瞬しかめる。
「そんなこと関係ないだろ」
「沙紀ちゃんから聞かれたんだ」
「だったら余計に関係ないだろ」
「もちろん、君のことを話したりはしないけど気になって。・・・というか、園田先輩ってどんな人?」
そして彼は答えてくれた。大企業の御曹司であること、兼古先輩と同じクラスなこと。陸上で長距離をしていること。
「でも・・・、彼女に対して優しくしてくれているなら問題はないんだけど、・・・ほら、兼古先輩って、人を見る目があるじゃない?なのに、あまりいい印象を持っているわけではなさそうだった。周囲からの評判はいいみたいだけど、先輩は絶対猫被りだって踏んでいるみたい」
「ということは、兼古先輩に聞いてみたんだ」
「いや・・・、兼古先輩もそのことは知っているから話してくれたんだ」
ふ~ん。でもその様子だと、ちゃんと気にしているみたいだね。
「もし、上柳さんに何かあったらどうするの?」
「何かって・・・、そこまでは関係ないだろ。一旦恋愛に発展したなら、もう僕にはあずかり知らぬところだ。うまくいくように願っているよ」
厄介なことに巻き込まれないように・・・?