8/2 (日) 15:00 感想

「沢渡、君のおかげだ、ありがとう」

部長が改まった様子で握手を求めてきたのは、宴もたけなわになった頃だった。

「いえ、僕のほうこそお礼を言わせてください。大きな舞台に立たせていただき、ありがとうございました。このことは決して忘れないと思います」

僕が手を握り返すと、部長は苦い顔になった。

「結局君に嫉妬していただけなんだと思う。部長というのは部全体の利益を考えなければならないのに、つまらないことに固執してしまって、本当にすまなかった」

いえ・・・いいんです。僕はまだ1年生なんですから。

そして宮殿に帰ると、陛下までも会場にいらしていたとのことで、お待ちかねのご様子だった。

「沢渡くん驚いたよ、君にそんな才能があったなんて。素晴らしかった」

陛下がそうおっしゃるくらいなのだから、僕も少しは自信を持っていいのかもしれない。・・・待って、陛下がいらしていたということは有紗さんも。

「沢渡さん、私からも言わせてください。本当に素晴らしかったです。今後のご活躍を楽しみにしております」

ありがとうございます。最近なかなか二人きりの時間を過ごせないけど、表立った場所で言っていただけるなんて、それはそれで嬉しい。

「沢渡、カッコよかったぞ。来年は優勝だな」

なんて、熱烈な抱擁とキスをしてきたのは結城。・・・やりすぎだよ、しかも気が早すぎる。

「ううん、決して大げさなことはないよ。来年はぜひとも優勝を狙ってほしいけど・・・その前に、文化祭にも出るんだよね」

・・・それもまた、同じくらい気が早いですよ。

「今度は卒業生として堂々と観に行くよ。あ~、楽しみだね」

なんて・・・待てよ。あの会場には我が国の高官が揃っていたことになる・・・それはそれで恐ろしい。

そして夜が明け、午後は自宅で休養することになった。

「希、本当にカッコよかったわ。まさか、学校でもあんな風にしているわけじゃないでしょうね」

もちろん母も観に来てくれていた。

「そんなわけないよ。あれは役柄だから」

「信じられないわね。あまりにも自然すぎて、役だってことを忘れてしまいそうだったわ」

その言葉は半分だけ受け取っておくことにして・・・、でも嬉しかった。みんなが笑顔だったというのが、とても印象的だった。

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