沢渡さんのお仕事振りを拝見していると、なかなか気持ちがいい。すっかり段取りはつかめてきたようで、先手を打ってあれこれ準備をなさっている。・・・その分、睡眠時間が短くなっているのが気になるが、私が申し上げることを素直に聞いてくださるわけではない。しかし、昨日殿下がおっしゃったように、側近の権限をフルに行使できるようにしなければならない。
そして今日は、ホーンスタッドからの報告のもと、沢渡さん、結城さんと、例の素性調査の犯人についての対策を考えることになった。
「やはり、まだあちこち嗅ぎ回っているようです。そこでですが沢渡さん、どなたか心当たりはありませんか?」
沢渡さんは、う~んと考えていらっしゃる。
「そうなんだよ、この間から考えていたんだけど、最近は同級生からの反応はいいから、多分園田先輩か部長じゃないかなと思うんだ。その二人は、いかにもそんなことをしでかしそうな気がする」
そこで結城さんが園田先輩とは?と聞かれ、沢渡さんが、上柳さんの彼氏で、有名企業の御曹司であることを告げた。
「沢渡、女性関係で揉めるのは頼むからやめにしてくれ」
「そんなこと言っても、僕は上柳さんのことを友達だとしか思えないんだ。それを目の敵みたいにされても困るよ」
「そう考えると、意外と上柳さんという線もあるんじゃないか?」
「それはないと思うな。もしそうだとして、それがバレたら、もっと僕に嫌われるじゃないか」
分かってないな~と結城さんは首を振る。
「女の怖さをお前は知らないんだ。逆恨みすることだってあり得る」
「そんな風に言わないでよ・・・」
沢渡さんがすっかりひるまれてしまったので、私が口出しさせていただく。
「望月さんとの関係は最近よくなったと伺いましたが?」
「うん、送られてきた台本にも、申し訳ないくらいの役のところに僕の名前を書いてくれていた。でもどうも、僕は部長のことを好きにはなれないんだ。最初はそうでもなかったんだけど、特に最近になってそう思うようになった。根拠はこれといってないんだけど、何となくそう感じるんだ」
そうですか・・・。帰国するまでには解決できるよう、私も協力したい。